2016年のブラック企業大賞が決定!! 今後の傾向はこれだ

2016年のブラック企業大賞が決定!! 今後の傾向はこれだ

昨年末ブラック企業大賞2016が発表されました。今年のワースト1になったのは一体どの企業なのでしょうか。何とも不名誉な大賞で、きちんとした労務管理ができていないイメージです。労働者の健康状態が心配ですね。

ブラック企業大賞とは

ほとんどの会社にはご縁がないブラック企業大賞。2012年に始まったブラック企業大賞の企画は今年で5回目を迎え、徐々に社会にも認知されるようになってきました。

では、このブラック企業大賞とは具体的にどのようなものなのでしょうか。不名誉すぎて、家族が勤めていたら心配になってしまうようなネーミングですが、どの企業が受賞したのか非常に気になるところです。

ブラック企業大賞というのは日本企業を対象にしたもので、パワハラやセクハラ、マタハラなどの各種のハラスメントや、長時間労働、残業代の未払い、偽装請負、派遣労働者への差別など、程度によっては犯罪にもなりうる状況にあるブラック企業に授与されるものです。このブラック企業大賞2016では、ブラック企業を下記のように定義づけし、複合的な面から大賞とする企業を具体的に決めていきます。このブラック企業大賞2016は、2016年12月に授賞式が行われました。

ブラック企業とは
ブラック企業大賞より

法令に抵触あるいは抵触する可能性があったり、パワハラがまかり通っていたりするという企業や法人が日常的に営業活動をし、そして営業活動に熱心過ぎたのか労働者の健康をむしばんでいるのです。そのようなブラック企業が労働者の心身の健康を考えたり、健康経営にシフトしたりする兆候が見られるようになるまでには、相当な困難を伴うことは想像に難くありません。企業風土として、労働者の心身を守る意識の根底が欠如しているとしたら非常に危険です。企業の安全配慮義務はどこへ行ってしまったのでしょう。

ブラック企業大賞2016に選出された企業

ブラック企業大賞2016に選ばれたのは株式会社電通(以下、電通)でした。これまで繰り返されてきた各種の報道を見ると、やはりというべきでしょうか。このブラック企業大賞2016の授賞式(2016年12月23日)の約1年前(2015年12月25日)に起きた電通の若手女子社員の自殺は非常に衝撃的なものでした。

1カ月の残業時間が105時間というのは、言葉では語り切れないような過酷すぎる状況です。そして、上司から受けたパワハラ。睡眠時間が1日2時間というのも耳を疑うようなものでした。

ブラック企業大賞の電通で3名の死亡が労災で認定

今では各種の報道で知られるようになりましたが、「殺されても放すな。目的完遂までは・・・」という言葉もある電通に伝わる「鬼十則」。健康経営からは程遠いような精神論ですが、これまで当たり前だった文化が浸透していた社内では違和感を感じる人は少なかったのかもしれません。この鬼十則という考え方は、電通社内に広く浸透していたようです。これまでに報道されているだけでも、電通では24歳の男性社員の自殺(入社から1年5カ月後の1991年8月)、30歳の男性社員の過労死(2013年6月)、そして最近ニュースで社会に知られることになった24歳女性新入社員の自殺(2015年12月)がありました。この3名の労働者は労災による死亡として労災認定されています。

ブラック企業大賞2016の電通で繰り返された過労死など

1991年に亡くなった24歳の男性社員は、慢性的な長時間労働に従事しうつ病になり、自殺してしまいました。
2013年に亡くなった30歳の男性社員は、長時間労働による過労が原因で病死してしまいました。
2015年に亡くなった24歳の女性社員は、慢性的な長時間労働に従事し精神的に追い込まれ、自殺してしまいました。
三田労働基準監督署はうつ病を発症していたと判断したようです。

3名の労働者が亡くなった時期を見ても分かるように、電通での長時間労働は繁忙期などの特殊な時期に限定(※1)されるものではなく、長年に渡って非常に過酷で心身の健康を損なうような労働環境が社内に継続的、あるいは断続的にあったことが推測できます。そして、その状況が改善されなかった点から、過酷な長時間労働が電通社内では当たり前のものになっていたのかもしれません。

※1:変形時間労働制を導入して一定の単位期間について、労働基準法の労働時間を、1週や1日単位ではなく、特定の期間での平均労働時間によって考える制度などもあります。お中元やお歳暮の時期のデパートなど、極端に忙しい時期に変形労働時間制を導入することが適当と考えられる場合もあります。ただし、電通で亡くなった3名の労働者の就業場所でこの変形労働時間制が導入されていたかどうかは不明です。変形労働時間制に関する詳細は、厚生労働省のサイトでご確認ください。

ブラック企業大賞2016の電通は就活学生の人気企業

電通と言えば、日本では広告業界のトップ企業として社会的にも認知されている企業です。ちなみに2016年の就職活動中の学生の就職希望先ランキングでは調査の種類によっては1位(2015年は同1位)や、10位などという結果もありました。就職活動中の学生にとって憧れの企業でもあった電通。入社できた学生達は、就職活動の勝ち組として周りからは羨望の目で見られていたことでしょう。それが、入社してわずかな間に過酷な長時間労働によって自殺に追い込まれることになるとは、想像すらできなかったと思います。

ブラック企業大賞2016の傾向

では、今回のブラック企業大賞2016の傾向はどのようなものだったのでしょうか。ブラック企業大賞2016に選出された電通以外にも労働者を執拗に追い詰めるかのような悪質な就業を強いた企業がノミネートされていましたので、ざっとその傾向を見ていきたいと思います。

ブラック企業大賞2016を受賞した企業

今回のブラック企業大賞2016で受賞した企業と、それらの企業のノミネート理由の概要は以下のものでした。

大賞:株式会社 電通

理由:過酷な長時間労働、上司によるパワハラ。

業界賞:ディスグランデ介護株式会社(「茶話本舗」FC企業)

理由:長時間労働、過酷な労働環境。

業界賞:株式会社プリントパック

理由:長時間労働、組合員への差別。

ブラックバイト賞:DWE JAPAN株式会社(「しゃぶしゃぶ温野菜」FC企業)

理由:長時間労働、過酷な労働環境、労働者への暴力行為。

特別賞・ウェブ投票賞をW受賞:日本郵便株式会社

理由:上司のパワハラによるうつ病の発症、自殺。理不尽なノルマ。

以上の受賞企業のノミネート理由を見ると、ブラック企業大賞2016で何れかの賞を受賞した企業は総じて長時間労働の傾向があり、長時間労働がブラック企業の証であるかのような印象さえ受けるほどです。長年に渡って労働者の労務管理がきちんとできていなかったことが、このような長時間労働につながり、世間にもブラック企業として認定されたのが伺えます。長期に渡って理不尽に就業を無制限に強要していたことが徐々に表面化してきたのでしょう。

ブラック企業大賞2016にノミネートされた企業は11企業

電通がブラック企業大賞2016を受賞した理由にもあるように『過酷で人権侵害的な労働環境をまともに改善することもなく放置し続けたり、違法なまでの超長時間労働やパワハラや時間外労働への賃金未払いをしたりなど、実に悪質な状況がブラック企業にはあります。ブラック企業大賞企画委員会(※2)がブラック企業を下記のように定義付けしていることは最初にお話しした通りですが、ノミネートされた企業は、下記の状況にあって、さらに裁判や行政からの処分などで問題ありとされた企業で、全部で11社がノミネートされました。

ブラック企業とは
ブラック企業大賞より

※2:ブラック企業大賞企画委員会は、作家や大学教授、弁護士や映画監督などで構成されています。今回は委員会メンバーとして11名の氏名が公表されていました。

ご参考までに、ブラック企業大賞2016にノミネートされた企業は以下の11企業でした。

  1. 株式会社エイジス
  2. 株式会社 電通 ⇒ ブラック企業大賞2016を受賞
  3. 株式会社 ドン・キホーテ
  4. 株式会社プリントパック ⇒ 業界賞を受賞
  5. 関西電力株式会社
  6. 佐川急便株式会社
  7. サトレストランシステムズ株式会社
  8. 宗教法人 仁和寺
  9. ディスグランデ介護株式会社(「茶話本舗」FC企業) ⇒ 業界賞を受賞
  10. 日本郵便株式会社 ⇒ 特別賞と投票賞をW受賞
  11. しゃぶしゃぶ温野菜 ⇒ ブラックバイト賞を受賞

ブラック企業大賞2016に頻出した長時間労働と今後の国の動き

2014年9月30日、厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」が発足し、2015年4月1日には過重労働撲滅特別対策班、通称「かとく」が発足しました。国としても、悪しき週間でもある長時間労働にメスを入れ、根本的に働き方を改革させようとしている姿勢が見えます。

過重労働対策の一層の強化
厚生労働省 過重労働対策の一層の強化(PDF)より

この「かとく」が創設されたことからも分かるように、厚生労働省は以前に比べて長時間労働に対しての対策を強化しています。厚生労働省が法規制を強化している中で行われたブラック企業大賞2016の選考。そして、今回のブラック企業大賞各賞を受賞した企業を中心に行われていた異常なまでの超長時間労働ですが、今後、改善の方向に進むかは現時点ではわかりません。企業体質を抜本的に改革すること、働き方を見直し改善すること、労働者の心身の健康に留意して企業が安全配慮義務を果たすことなど、やるべきことは山積みです。

2016年12月26日に厚生労働省では違法な長時間労働による過労死等を防止するために新たな基準を作り、サイトで公表しました。今後は、実際の労働時間と自己申告した労働時間が相違しないように企業に実態調査を求め、悪質な企業名の公開が拡大化されることになります。この対策は、2017年1月からスタートされる予定と発表されています。

是正指導段階での企業名公表制度の強化について
厚生労働省 第4回 長時間労働削減推進本部 資料(PDF)より

ブラック企業大賞2016とこれまでのブラック企業大賞を比較

今回のブラック企業大賞2016は、長時間労働やパワハラに関して問題のある企業が目立ちました。では、この傾向はこれまでのブラック企業大賞と比較すると、何か変化はあったのでしょうか。2012年以降の各年のブラック企業大賞を受賞した企業名とその理由を振り返ってみましょう。(企業名・理由はブラック企業大賞サイト他より)

2012年 東京電力株式会社

理由:2011年3月11日の東日本大震災後の対応に絡む理由が大きかったようです。収束に向けての対応、避難者・被害者への保障の問題、原発建設現場での被曝労働などが挙げられていました。

2013年 ワタミフードサービス株式会社

理由:ブラック企業大賞のサイトに明確な理由は記載されていませんでしたが、2008年に若手女子社員が長時間労働による過労が原因の精神疾患で自殺してことが当時大きなニュースになりました。

2014年 株式会社ヤマダ電機

理由:複数年にわたって、何人もの労働者が過労で自殺したそうです。

2015年 株式会社セブン-イレブン・ジャパン

理由:フランチャイズ店オーナーの弁当などの見切り販売への妨害(独占禁止法が禁じる「優越的地位の濫用」)・不当な経営の圧迫など。コンビニ業界の悪しき構造を象徴していることなどが理由とされました。

そして、直近のブラック企業大賞2016を受賞したのが電通です。これまでの受賞企業とその理由などを見ていくと、社会の状況もある程度加味されているように見えます。

今回のブラック企業大賞2016を受賞した電通は、広告業界のリーディングカンパニーです。そんな大企業でも悪質な超長時間労働やその勤務時間の報告に関しての改ざん指示など、実態のない労務管理も浮き彫りになりました。

さいごに

労働時間は、実態と労働者からの自己申告が大きくずれないよう、適正な労務管理が必要です。厚労省の新基準に期待するだけではなく、ブラック企業大賞2016にノミネートされた企業自ら労働者の健康を守っていただければと思います。

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