産休制度や育休制度を、新たに作るかどうするか?

産休制度や育休制度を、新たに作るかどうするか?

妊娠や出産を理由に離職する女性は多くいますが、企業としては労働力を確保しておきたいという思いもありますよね。そこで、今回は「産休制度や育休制度を、新たに作るかどうするか?」がテーマです。

女性が働くということ

新卒で入社した会社でそのまま就業し続ける人もいますが、結婚や妊娠、出産、あるいは育児を理由に離職する女性労働者はたくさんいます。企業としては、職場に慣れた労働者にはできれば残ってほしいと考えるわけですが、そのような中で、なぜ女性労働者は離職してしまうのでしょうか。

一般的に女性の労働力はM字カーブを描くと言われています。結婚や妊娠・出産前の20台半ばと、子どもが独り立ち、あるいは手がかからなくなった50台前後に労働力が高くなるのですが、これは昔から変わっていないようです。特に子供が小さいうちは、働きに出にくい傾向にあるのでしょう。

女性の離職

内閣府の発表に非常に興味深いものがありました。女性の継続就業を妨げる壁(PDF)という資料なのですが、一部をご覧いただきたいと思います。

結婚、出産を経ることにより女性の就業率は低下する/末子3歳未満の労働力率はほぼ横ばいである
内閣府 女性の継続就業を妨げる壁(PDF)より

左のグラフでは女性は結婚の前後で無職率が8.2%から31.4%に増加していますが、出産後には無職率が72.1%とかなり大幅に増加していることが分かります。右のグラフでは、末子3歳未満の既婚の女性の労働力率は他と比べて著しく低いことが分かります。

産休とは

現在、妊産婦である労働者は労働基準法(以下、労基法といいます)で定められた産前産後休業(以下、産休といいます)を取得することができます。

産前休業とは

産前休業は、出産予定日の6週間前(双子以上の多胎妊娠の場合には14週間前)から、事業主に請求すれば取得することができます。女性が「請求すれば取得できる」ものですから、請求しなければ無理に産前休業をさせる必要はありません。また、もし実際の出産日が出産予定日よりも遅れた場合でも出産予定日から出産日までの期間も産前休業に含まれます。ちなみに、出産日当日は産前に含まれます。

産後休業とは

産後休業は出産後8週間です。ただし、産後6週間を経過して、出産をした女性が希望し医師に問題がないと判断・許可された場合には職場に復帰することができます。産後6週間までは、女性が希望したとしても就労させることはできません。産前休業との最大の違いは、女性本人が請求の有無に関係なく与えなければならないことです。違反した場合には、事業主に罰則が科せられます。

一般的に効力の強い順に、法律、労働協約、就業規則、労働契約ですから、産前産後の休業に関して会社の就業規則に規定がなくても労基法に規定がありますので、取得することができます。出産は「妊娠期間4カ月以上を経過した場合の分娩」を指しますので、妊娠して4カ月を経過した普通分娩などだけではなく、流産(人口流産を含む)も含まれます。ただし、産休中の賃金の支払いの有無は企業によって異なります。

育休とは

さて、産休を終えた女性労働者の多くが次に取得するのが育児休業(以下、育休といいます)です。これは、育児・介護休業法に定められたもので、労働者と法律上の親子関係にある「子」について、実子、養子を問わず、労働者の性別を問わずに取得できるものです。
平成29年10月1日から改正法が運用されています。

改正後の育休について

平成29年1月1日に施行される改正育児・介護休業法ですが、<平成29年10月1日から改正育児・介護休業法がスタートします(PDF)。その中から働く人には嬉しい部分を抜粋しました。育児をしながら働く人にとっては朗報です!

1つ目)最長2歳まで育休の再延長が可能になりました。

改正前:労働者は、事業主に申し出ることにより、子が1歳に達するまでの間、育休をすることができました。そして、一定の場合、子が1歳6カ月に達するまでの間、育児休業をすることができるとされていました。

改正後:子が1歳6カ月になっても、保育園などに入所できないなどの事情がある場合には最長で子が2歳まで延長できることになり、育児休業給付金の給付期間も2歳までになりました。

2つ目)事業主の努力義務

子どもが生まれる予定の人に育児休業などの制度について知らせることが努力義務になりました。育休中や育休後の待遇や労働条件などについて知らせるように努めてください。

3つ目)育児目的休暇の導入を促進

未就学児を育てながら働く人が子育てをしやすいように育児に関する目的のために利用できる休暇制度を設ける努力義務が事業主に課されました。

企業として産休や育休の制度を作るか?

社会の流れは…

産休中は、健康保険・厚生年金保険と呼ばれる社会保険料は、事業主の申し出があれば、被保険者分及び事業主分とも徴収されません。また、育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育休中も、健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業主の申し出があれば、被保険者分及び事業主分とも徴収されません。それから、忘れてはならないのがパパママ育休プラス(※1)です。

※1. パパママ育休プラスとは
父母がともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2カ月に達する日(1歳2カ月になる日の前日)までの間取得できるもので2010年から施行されています。父母の1人ずつが取得できる期間の上限は、父親が1年間、母親は出産日・産後休業期間を含む1年間です。

必ずしも法定を上回る産休・育休が必要なわけではない

時代の変化とともに産休や育休の制度についていくつもの改正がされている中で、企業としてこれから産休や育休の制度について創設の可否を検討するにはどうすれば良いのでしょうか。

先ほどお話しした産休の期間、つまり出産予定日の6週間前(双子以上の多胎妊娠の場合には14週間前)の産前休業と、出産後8週間の産後休業はあくまでも労基法で決められているものです。ですから、労基法の基準を下回ってはいけませんが、その基準を超過する分には構いませんので企業によってはこれ以上の期間を産休としている場合もあります。ただ、労基法の基準を超える産休・育休を必ずしも定めなければならないわけではありません。

ちなみに、平成20年5月20日に厚生労働省が発表した今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査結果によると、法律を上回る育児休業制度導入企業は、全体では4社に1社、企業規模1000人以上では2社に1社だったそうです。また、企業規模が大きいほど、女性正社員の働き方で多いパターンとして「子を出産しても継続して就業している」の割合が高いことも分かったそうです。他にも、育児休業制度や短時間勤務制度を利用したいという男性労働者が3割を超えたと発表されています。

法律を上回る育児休業制度の導入状況
厚生労働省 今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査結果より

今から9年も前の調査結果とはいえ、既に労基法を上回る育休を導入していた企業が4社に1社もあったことや、昨今の社会の潮流からさらに導入する企業は増えているのかもしれません。

産休・育休の制度を導入する際のSTEP

STEP1 産休・育休の制度をどうするか現状の確認

労基法の基準を超える社内規定を必ずしも導入しなければならないわけではありませんが、社会の動きを見ていくと何かしらの対策があれば、人手不足の解消にもつながりますし、人手不測の解消は長時間労働の是正にもつながります。有能な労働者が離職せずに企業に残るということは、特定の人への負担の増加を未然に防止できますし、何よりも労働者自身が安心して働き続けられる環境を得ることは生活の安定にもなります。

社会の動きが分かったところで、社内に産休・育休の制度を作るかどうか検討するには何をすれば良いのでしょうか。まずは、産休・育休の制度の利用者がどのくらいいるか、子の看護休暇(休業ではなく休暇)がどのくらいの頻度で希望されているかなどを調べます。

次に、産休・育休の制度は職場に復帰することが前提のものですから、現状で妊娠・出産や育児を理由に離職している人の離職理由についてもう少し詳しく確認してみましょう。例えば、保育園に入園できなかったことを理由に離職しているのか、妊娠・出産や育児を仕事と両立できないという考えが理由なのか、労基法の産休・育休が取得しにくいなどの理由が職場にあるのかなどです。

STEP2 産休・育休の制度の規定をどうするか

労基法で認められている産休・育休以外に、企業が独自で産休・育休を導入するかどうか検討するときに重要なのかどのような要件を設けるのかということです。例えば、勤続年数以上、産休・育休後も職場復帰が見込まれることなどいくつかの要件があると思います。

STEP3 産休・育休の制度をどのように周知させるか

企業が独自の制度を設けていることを誰も知らないという気持ちで積極的に産休・育休の制度があることを周知させるにはどのような方法が効率的なのかを考えてみます。外回りの労働者が多い企業と内勤が大半を占める企業、店舗勤務者が多い企業など、それぞれの企業にあったやり方がありますね。

産休・育休の制度が法定を上回った場合のメリットとデメリット

○福利厚生が魅力的になる

産休は女性労働者に限定されますが、育休は労働者の性別を問わないものです。企業が独自に産休・育休の制度を導入することで、男性に対しても育休の取得を推進しやすくなります。社員のニーズに柔軟に対応する企業、あるいは福利厚生に力を入れると労働者からは非常に魅力的に見えます。社会保険料の増額が影響してか、法定外福利が抑制状況にある中で他社との差別化も図れるのではないでしょうか。

○離職率の低下を狙える

一般に福利厚生に恵まれている企業の場合は、離職率は低いとも言われていますし、福利厚生、就業環境に配慮のある企業は労働者が長く働き続ける土壌があるとも言われています。
これまでの労働者の離職理由を調べ、必要な部分を社内制度として整備していくこと、今回の場合は産休・育休の制度の創設ですが、働き方改革も進む中で労働者が働きやすい企業風土も作り出せるのではないでしょうか。

×周りへの影響

産休・育休をとる世代は一般的には働き盛りの人が多く含まれています。ですから、その労働者が仕事を休んでいる間は、その人の仕事の引継ぎが必要なことも含めて周りの労働者への影響も少なからずあります。産休・育休の制度を使って仕事を休んでいる人がいる間、代わりの人を雇うのか、周りがどのようにカバーするのかよく検討しておく必要があります。

×休んでいる間のモチベーションの問題

労働者が法定の基準を超えて、自分あるいは家族のためにまとまった休みをとるということは、当然、周りの労働者に影響もあります。そして、その影響からなのか、職場復帰後にスムーズなスタートを切りにくいこともあるようです。休んでいる間のモチベーションの保ち方についても、何らかの対策を立てておく必要があるのではないでしょうか。

法定外福利は内容の吟味が重要

法定以上の福利厚生として産休・育休の制度をより充実させることが企業価値を高める近道になることもあれば、時短で働ける道を用意することが企業価値を高めることになるか、あるいは何かほかの方法が良いのかは企業によって異なります。ですから、社会の流れに合わせて産休・育休の制度を無理やり創設することを進めているわけではありません。ただ言えることは、人手不足の時代だからこそ、労働者の声に耳を傾けて本当に必要なものを取り入れる姿勢を持ち続けることが重要だということです。事業場の実態をよく見極め必要なことを判断してください。何のためにその法定外福利を導入するのか、事業場の実態と目的を考えてから導入することをお勧めします。

さいごに

産休・育休の制度の導入を検討するときには、より多くの人が利用するための内容や周知方法もしっかりと考えると良いと思います。福利厚生を充実させ、働き方に柔軟性を持たせると労働者からの魅力は増すようです。

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