障害者雇用率の計算は誰にでもできる!

障害者雇用率の計算は誰にでもできる!

障害者雇用率の計算方法は実はとっても簡単なんです。ポイントさえ知ってしまえば、実は誰にでもできるんです。今回、押さえるべきポイントをざっと覚えてしまいましょう。試しに計算してみてくださいね。

障害者雇用を巡る近況

平成28年12月の厚生労働省職業安定局雇用開発部障害者雇用対策課が発表した「平成28年 障害者雇用状況集計結果(PDF)」によると、民間企業の障害者雇用率は2.0%で雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新したそうです。そして、実雇用率が.92%、前年比で0.04ポイントの上昇とも発表されています。また、障害者雇用率を達成した民間企業の割合48.8%で前年比で1.6ポイントの上昇、公的機関や独立行政法人などでも雇用障害者数及び実雇用率のいずれも前年比で同程度または上回るとなっていますから、障害者の雇用が社会全体で進んでいることが分かります。

障害者雇用率を達成しない企業に対する障害者雇用納付金(※)の制度や、指導に従わなかった場合や障害者の雇用状況に改善が見られないなどの場合には社名を公表するなど、障害者の雇用に対して国は強い姿勢を打ち出しています。平成28年の場合、社名の公表をされたのは2社で、本社所在地、代表者役職と氏名、業種が公表されています。

※障害者雇用納付金の制度の対象になるのは、平成27年4月からは、常時雇用している労働者数が100人を超える事業主になりました。障害者雇用率を下回る場合には、 障害者雇用納付金を納付する必要がありますが、障害者雇用率を上回る場合には、調整金の支給申請ができます。

そのような流れの中で、平成28年の障害者雇用率の未達成企業は45,790社あり、不足数が0.5人または1人である企業(1人不足企業)が、66.4%と過半数を占めていることや、障害者を1人も雇用していない企業(0人雇用企業)が、未達成企業に占める割合は、58.9%となっていることも同資料から分かります。義務を達成している企業と未達成な企業が混在する状態ではありますが、企業としての社会的な責任を果たすためにも、どのくらいの人数の障害者を雇用すれば良いのか?また、その計算はどのようにすれば良いのかを確認しておきましょう。

障害者雇用率

障害者雇用率は、障害者雇用率制度で規定されているもので、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、障害者雇用促進法といいます。)では、事業主や国及び地方公共団体に対して身体障害者又は知的障害者の雇用義務などについて述べられています。精神障害者は雇用義務の対象ではありませんが、現在は、実雇用率の計算に関しては精神障害者(精神保健福祉手帳の交付を受けている場合に限る)を各企業の雇用率(実雇用率)の算定の際にはカウントして算入できます。

同法に述べられているのは、「事業主(民間企業)、国そして地方公共団体は、常時雇用している労働者数に対して一定の割合(法定雇用率)以上の身体障害者や知的障害者を雇用することが義務づけられるということです。この法定雇用率は障害者雇用率とも呼ばれ、5年に一度のタイミングで見直しがされることになっています。

障害者の法定雇用率
厚生労働省 障害者の法定雇用率の引き上げについてより

なお、平成30年4月からに関しては、精神障害者の雇用が義務化され、障害者雇用率の算定式に精神障害者を追加することが決定しています。このことを踏まえて、障害者雇用率は平成30年4月1日から新しいものに変更される予定です。

障害者雇用率の計算方法

障害者雇用率は、決められた算式に数字を当てはめて計算します。

障害者雇用率の設定基準

障害者雇用率の雇用率の設定基準式は、現時点では以下の通りです。なお、除外率が設定されている企業に関しては注意が必要です。

現在

障害者雇用率=(身体障害者・知的障害者である常用労働者の数+失業している身体障害者・知的障害者の数)÷(常用労働者数+失業者数)
※除外率が設定されている企業の場合には、常用労働者数から除外率相当労働者数をひきます。

なお、平成30年4月1日に障害者雇用率が予定通り変更になった場合には以下のようになります。

平成30年4月1日 から

障害者雇用率=(身体障害者・知的障害者、精神障害者である常用労働者の数+失業している身体障害者・知的障害者、精神障害者の数)÷(常用労働者数+失業者数)
※平成30年4月1日から精神障害者が追加されます。
※除外率が設定されている企業の場合には、常用労働者数から除外率相当労働者数をひきます。

国は、上記の算定式による割合を一般民間企業における雇用率設定基準として設定し、事業主は障害者雇用率の達成義務を果たさなければなりません。

平成30年4月1日より、精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加えること、その施行後5年間に限り従来の算定基礎で計算した率と、精神障害者を加えた算定基礎で計算した率との間の率で政令の定める率とすることがすでに発表されています。また、平成35年4月1日以降より、身体障害者・知的障害者・精神障害者を算定基礎として計算した率とすることも併せて発表されています。

障害者の採用計画の作成時には、上記の平成30年4月1日からの改正についても留意していただければと思います。

実雇用率を計算

事業主は、上記の算定式を基に国が設定した基準をクリアすることが義務付けられているのですが、障害者雇用率を達成しているか否かを以下の計算式で求めます。

実雇用率=(障害者である労働者の数 + 障害者である短時間労働者の数×0.5)÷(労働者の数 + 短時間労働者の数×0.5)

法定雇用障害者数(障害者の雇用義務数)=(労働者の数 + 短時間労働者の数×0.5)×障害者雇用率

※現時点では精神障害者については事業主に雇用義務はありませんが、精神障害者である労働者を雇用しているときには、その精神障害者である労働者の数に相当する数の身体障害者又は知的障害者である労働者を雇用しているとみなされます。

実雇用率が法定雇用障害者数(障害者の雇用義務数)以上であれば障害者雇用率制度で事業主に課せられた義務を達成していると言えます。

除外率

障害者雇用促進法では、障害者の職業の安定を図るために障害者雇用率を定めています。しかし、中にはこの障害者雇用率の定めを適用することになじまない性質の職業もあります。そのような障害者が就業することが困難と考えられる業種に関しては、労働者数を計算する際に除外率に相当する労働者の人数を除外して、その部分に関しては障害者の雇用義務を軽減することが認められています。この制度を除外率制度といいます。

事業主の雇用義務の軽減措置として定められているもので、身体障害者又は知的障害者が就業することが困難であると認められる職種が相当の割合を占める業種として指定された業種に関しては、事業主が雇用の義務を負っている法定雇用障害者数の算定に際し、常時雇用している労働者数から、その業種ごとに定められた一定の割合の人数を除外することが認められています。除外率は業種ごとに以下のように設定されています。

各業種の除外率
厚生労働省 除外率制度について(PDF)より

では、次に、障害者雇用率の計算に出てくる用語についての定義を確認しておきたいと思います。

障害者

障害者雇用率制度の根拠になっている障害者雇用促進法では、第二条二項で「身体障害者 障害者のうち、身体障害がある者であつて別表に掲げる障害があるものをいう。」と障害者を定義づけています。

障害者雇用促進法の別表は以下のものです。この表の内容を簡単にまとめると、視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害などが永続する場合に障害者というと言えます。

障害者雇用促進法の別表

身体障害者福祉法では、第四条で「別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。」と規定されています。

このように、法律によって若干の違いはありますが、障害者という言葉の定義についてイメージがつくのではないかと思います。

障害者雇用率制度での企業の雇用範囲と義務の対象

なお、障害者雇用と企業に関係する障害者雇用率制度では、以下の障害者が企業の雇用範囲と義務の対象です。

雇用義務の対象

身体障害者障害程度等級表の1~6級、および7級に掲げる障害が2以上重複している者を指します。具体的には以下の通りです。

1 身体障害者

障害者のうち、身体障害がある者であって上の別表に掲げる障害がある

2 知的障害者

障害者のうち、知的障害がある者であって、知的障害者更生相談所等に知的障害があると判定された者

実雇用率算定の対象

3 精神障害者

障害者のうち、精神障害があり、かつ精神障害者保健福祉手帳所持者であって、症状が安定し、就労が可能な状態にある、もしくは、統合失調症・そううつ病(そう 病・うつ病を含む)・てんかん(いずれも手帳所持者を除く)で症状が安定し、就労が可能な状態にある者
→ 精神障害者である労働者を雇用しているときには、その精神障害者である労働者の数に相当する数の身体障害者又は知的障害者である労働者を雇用しているとみなされます。

4 その他の障害者

上記の精神障害者に該当しない発達障害を有する者、難治性疾患の患者などである者

障害者数のカウント方法

まず、その障害者の1週間の所定労働時間がどのくらいあるかで短時間労働者か、短時間以外の常用雇用労働者かを区分します。これは、身体障害者、知的障害者、精神障害者ともに同じように1週間の所定労働時間で考えます。

  1. 20時間以上30時間未満 → 短時間労働者
  2. 30時間以上 → 短時間以外の常用雇用労働者

次に、その人の障害の重さを確認します。

※身体障害者障害程度等級表の1~2級に該当、もしくは3級に該当する障害を2以上重複していることで2級とされる人は「重度身体障害者」です。

  1. 重度以外
  2. 重度

次に、上記のa、b、c、dの組み合わせを確認します。

障害の程度が重度以外の人の場合
20時間以上30時間未満 → 短時間労働者 → 1人を0.5カウント
30時間以上 → 短時間以外の常用雇用労働者 → 1人を1カウント

障害の程度が重度の人の場合
20時間以上30時間未満 → 短時間労働者 → 1人を1カウント
30時間以上 → 短時間以外の常用雇用労働者 → 1人を2カウント

障害者雇用に関する助成金については、障害などに関する各種の手帳を持たない統合失調症、そううつ病(そう病、うつ病を含む)、てんかんの方も対象です。それから、公共職業安定所や地域障害者職業センターなどの支援については、「心身の障害があるために長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な方」が対象です。

常用労働者

常用労働者というのは、別の言い方をすれば常時雇用している労働者ということです。
1年以上継続して雇用される者(見込みを含む)のうち、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者は障害者である労働者も含めて人数を考えます。1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者は、1人を0.5人の労働者としてカウントしますが、1週間の所定労働時間が20時間未満の労働者については、障害者雇用率制度上の常時雇用する労働者には含まれません。

1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者は「短時間労働者」、1週間の所定労働時間が30時間以上の者は「短時間以外の常用雇用労働者」です。ですから、常時雇用する労働者と正社員の数は一致するとは限りません。また、短時間以外の常用雇用労働者(1人を1人としてカウント)と短時間労働者(1人を0.5人としてカウント)の合計を「常用雇用労働者の総数」といいます。具体的には、以下の労働者を指します。

  1. 雇用期間の定めのない労働者
  2. 一定期間を定めて雇用される場合でも、その雇用期間が反復継続されて事実上、上記と同様の状態と認められる者
  3. 日々雇用される者だとしても、雇用契約が日々更新されて事実上、上記の1)と同様の状態と認められる者

労働者のカウント方法

ここまでを一度まとめましょう。
障害者の場合と同じように、まずは1週間の所定労働時間で区分してください。

  1. 20時間以上30時間未満 → 短時間労働者 → 1人を0.5カウント
  2. 30時間以上 → 短時間以外の常用雇用労働者 → 1人を1カウント

上記aおよびbに含まれるのが、雇用期間の定めのない労働者もしくはこれと同様の状態と認められる者です。

なお、出向中の労働者、登録型の派遣労働者、生命保険会社の外務員などについては以下のように注意が必要です。

出向中の労働者

生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける事業主の労働者として取り扱います。どの事業主の労働者として考えるかについては、雇用保険の取扱いを行っている事業主の労働者として考えてください。

登録型の派遣労働者

契約期間の多少の日数の隔たりがあっても、同一の派遣元事業主と雇用契約を更新または再契約して引き続き雇用されることが常態となっていれば、常時雇用する労働者として取り扱う場合もあります。なお、事業所と最初の雇用契約を締結した日から1年を経過していない場合であっても、最初の雇用契約を締結した日から1年以上引き続き雇用されると見込まれる場合は常用労働者に含まれる場合があります。

生命保険会社の外務員など

雇用保険の被保険者として取り扱われているかどうかで判断します。

計算例で確認

では、試しに計算してみましょう。民間企業A社の場合です。必要な計算式は、先ほどのお話しにあった実雇用率、法定雇用障害者数(障害者の雇用義務数)の2つの式です。

実雇用率=(障害者である労働者の数 + 障害者である短時間労働者の数×0.5)÷(労働者の数 + 短時間労働者の数×0.5)

法定雇用障害者数(障害者の雇用義務数)=(労働者の数 + 短時間労働者の数×0.5)×障害者雇用率

障害者雇用率 → 2.0%

  1. 労働者数 → 1,500人
  2. 短時間労働者 →  500人  ※短時間労働者→1人を0.5カウント
  3. 身体障害者又は知的障害者である労働者 16人
  4. 身体障害者又は知的障害者である短時間労働者 8人  ※短時間労働者→1人を0.5カウント
  5. 重度身体障害者又は重度知的障害者である労働者 4人 ※重度障害→1人を2カウント
  6. 重度身体障害者又は重度知的障害者である短時間労働者 5人 ※重度障害の短時間労働者→1人を1カウント
  7. 精神障害者である労働者 1人
  8. 精神障害者である短時間労働者 2人

実雇用率=(C 16 + D 8 × 0.5 + E 4×2 + F 5 + G 1+ H 2×0.5)÷(A 1,500 + B 500×0.5)=35÷1,750

計算結果が0.02なので、2.00% → 障害者雇用率は達成です。

ちなみに、この民間企業A社の法定雇用障害者数は以下の通り
法定雇用障害者数 = (1,500+500×0.5)×0.02=35 です。

注意したいのは、Aの労働者の数にBの短時間労働者は含まないということです。最初に、労働者の1週間当たりの所定労働時間数で区分するのは、ここでAかBかを分けるためです。それから、民間企業A社の場合には法定雇用障害者数と実雇用率が同じだったので問題ありませんが、計算の結果で小数点以下の端数が出た場合には、小数点以下は切り捨てになるのでご注意ください。

さいごに

障害者雇用率制度は、企業に対して障害者の雇用を義務付ける制度です。ですから、正しく計算して、障害者雇用率を達成しているかどうかを確認するようにしましょう。特に、新入社員、転職が多い時期にはご注意ください。

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