外国人労働者の労務管理で気を付けるべきことは?

外国人労働者の労務管理で気を付けるべきことは?

最近では、日本国内でも外国人の労働者を見かけることが多くなってきましたね。言葉や文化の壁に悩んでいる人事も多いと思いますが、外国人労働者の労務管理をする上で、気を付けるべきこととは何でしょう。

外国人労働者の現状

まずは、現状は把握から始めましょう。
厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策労働部の外国人労働者を巡る最近の動向 ~高度外国人材の活用促進のために~(平成28年4月26日)(PDF)のグラフをご覧ください。

総在留外国人数と我が国の総人口に占める割合の推移
厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策労働部外国人労働者を巡る最近の動向 ~高度外国人材の活用促進のために~(PDF)

こちらの資料は、総在留外国人数と我が国の総人口に占める割合の推移に関するものです。この資料を見ると、日本国内に在留する外国人が年々増加の傾向にあることが分かります。また、厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成28年10月末現在)によると、外国人労働者数は届出義務化以来、過去最高を更新して約108万人という調査結果が報告されています。前年同期比で175,873人(19.4%)増加し、4年連続で過去最高を更新したそうですから、今後もその傾向は続いていく可能性があります。

これらのことは、政府が進めている高度外国人材や留学生の受入が進んできていることに加え、雇用情勢の改善が着実に進んでいることが考えられるそうですが、増え続ける外国人労働者の労務をこれからどのように管理していくのか、また外国人労働者が増えたことによる労務管理上のメリットとデメリットにはどのようなものがあるのか考えていきたいと思います。

外国人労働者とは

外国人労働者と聞いて、何を思い浮かべますか?就労ビザがあって日本国内で就業している人を思い浮かべる方もいるとは思いますが、実は「外国人労働者」という言葉は国境を越えて就労する労働者全般を指しています。ですから、必ずしも就労ビザを持っているとは限りませんから、いわゆる不法就労者もいます。

外国人労働者の労務管理などの指針

厚生労働省では「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を出し、事業主が講ずべき必要な措置について定めています。この指針では外国人労働者を第三条において「技能実習制度において「特定活動」の在留資格をもって雇用関係の下でより実践的な技術、技能等の修得のための活動を行う者(以下「技能実習生」という。)も含まれるものである。」と定義づけています。

外国人労働者の人数や就労先など

厚生労働省の発表によると、中国人(全体の31.8%)(前年同期比6.9%増加)、ベトナム人(同15.9%)(同56.4%増加)、フィリピン人(同11.8%)(同19.7%増加)、ブラジル人(同9.8%)(同10.3%増加)、ネパール人(同4.9%)(同35.1%増加)ということです。

それから、外国人労働者、外国人労働者を雇用する事業所ともに、製造業が最も多く製造業全体で外国人労働者数全体の31.2%を雇用しているそうです。この数字は外国人労働者を雇用する事業所全体の23.5%を占めているのですが、製造業の外国人労働者の構成比は前年に比べて減少した一方で、建設業、宿泊業・飲食サービス業や卸売業・小売業での増加が見られるそうですから、より外国人労働者の就労先が広がってきていることが推測できますね。

外国人労働者の労務管理の注意:「資格」の確認と管理

日本の慣例を知らないことや言葉や価値観、あるいは文化の違いなどからトラブルの原因になることもありますから、事業主は外国人労働者の労務管理について日本人の労働者とは異なる対応を求められる場合もあります。生産年齢人口の減少による働き手の減少などに対して外国人労働者の労働力は今や日本の経済市場には欠かせないものですが、やはり労務管理の難しさをクリアしなければ今後の展望にも陰りが見えてくるのではないでしょうか。

外国人労働者の労務管理~採用の際の確認事項

外国人労働者の労務管理ポイント その1)残留資格・在留期限・在留期間は必ず確認する

労働者の労務管理は募集の時点から始まると言っても過言ではありませんが、日本人の労働者を採用する場合と外国人労働者を採用する際に大きく異なる点として、在留資格の確認があります。

海外から日本にやってくるたくさんの外国人。日本に外国人が在留するためには資格が必要なのですが、この資格は入国管理局によると、平成28年4月現在は「外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計、業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、技能実習、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在、特定活動、在留資格、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者」という28種類に分けられています。この28種類の詳細については、入国管理局が公開していますので、ご興味のある方はご覧ください。→入国管理局「在留資格一覧表

この28種類のうち、全ての在留資格で一般企業が採用できるわけではありませんから、自社で採用しても問題ない在留資格を持っているかどうかを確認してください。採用の前に必ず、どのような資格で日本に在留しているのかをきちんと確認しておきましょう。そして、就労が認められている資格でない場合には、どんなに優秀な人でも採用しないでください。

外国人労働者の労務管理~高度人材ポイント制

平成24年5月7日から始まった高度人材ポイント制は、高度外国人材の受入れを促進するために高度外国人材に対しポイント制を活用した出入国管理上の優遇措置を講ずる制度のことです。高度外国人材には3つの分類があり、公私の機関との契約に基づいて行う研究や研究の指導又は教育をする高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」、公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」、公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」があります。

これらの外国人に対しては、ポイントの合計が一定点数(70点)に達した場合には出入国管理上の優遇措置がありますので、一般的な外国人労働者の労務管理とは異なる点もあります。また、2017年4月26日からこのポイント制度が改正されたことによって高度専門職に該当する人が増えることが予想されますので、早めに高度人材ポイント制に関する改正情報を確認しておくことをお勧めします。高度人材ポイント制に関する出入国管理上の優遇制度の詳細については、法務省入国管理局のサイトにて最新情報をご確認ください。

外国人労働者の労務管理~在留カード

在留カードの制度ができる以前は日本に入国した外国人が自分自身で行わなければならなかった外国人登録ですが、外国人労働者を雇用する企業は労務管理の一環として外国人登録の手続きが完了していない人に対して、手続きをするように指導する必要がありました。日本人の労働者だけを雇用しているときには全く関係なかったことも、外国人労働者を雇用したからこそ生じるこのような問題への対応も必要になるなど不慣れな分、外国人の労務管理を煩雑に感じてしまうこともあったようです。

在留カードは2012年7月9日から始まったのですが、この在留カード委は在留期間に関する記載があります。在留期間の上限は最長で5年なのですが、在留資格ごとに在留期間は異なりますが、最長の5年になった人の場合2017年から順次5年の期限を迎えますので、在留カードの有効期間の更新の申請を行うように外国人労働者を雇用する企業でも指導をするようにしましょう。

在留カードサンプル
法務省入国管理局 在留カードとは?より

外国人労働者の労務管理の注意:「雇用契約書」はより慎重に作成

日本人との労働慣行の違いに配慮

外国人労働者が日本に労働力をもたら一方で、日本の古くからの労働慣行になじみがないことによるトラブルが生じやすいという問題もあります。ですから、日本人だけの職場では特に正式な取り決めがなく慣例として一般的に行われているようなことでも、外国人労働者を雇用するのであれば明確に分かりやすく明示するようにしましょう。

外国人労働者の労務管理の義務:適正な管理を

外国人労働者の労務管理~留学生の勤務は28時間

外国人労働者の労務管理ポイント その2)労働時間数は正確に管理する

海外から多くの外国人留学生が日本の大学などで学んでいますが、日本人の学生と同様にアルバイトをすることが認められている訳ではありません。外国人労働者の中でも外国人の留学生は1週間に上限を28時間としての就労しか認められていません。そもそも留学という在留資格で日本に滞在しているのですから、アルバイトはあくまでも資格外活動でしかありません。この資格外活動によって、本来の目的である留学(学業)に支障が出るような事態になっては雇用側である企業の責任も問われることになります。この28時間は一人の外国人留学生の通算での時間ですから、複数の企業でアルバイトをした場合には、そのすべての時間を通算して考えなければなりません。ただし、この1週間に28時間というのは原則での時間数ですから、夏休みなどの長期休暇の場合には特例として1日8時間1週間で40時間まで大丈夫です。

万が一、この規定の上限時間を超えてしまうとオーバーワークになってしまい、雇用している企業にも留学生本人にも罰則が課されます。ちなみに、オーバーワークに関する罰則は、出入国管理及び難民認定法で定められていて企業に対しては不法就労助長罪が適用されて、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方です。留学生本人は不法就労となり強制送還の対象になることもあり、その場合にはその日以降5年間(上陸拒否期間)は日本に入国することができなくなります。

出国管理及び難民認定法

なお、不法就労であることを知らなかったケース(不法就労だと認識していない、在留資格の確認を怠ったなど)でも、処罰されますのでご注意ください。

外国人労働者の労務管理~雇用労務責任者の配置

常時10人以上の外国人労働者を使用する場合には、外国人労働者雇用労務責任者を選任しなければなりません。外国人労働者雇用労務責任者は外国人労働者の雇用や労働条件などに関する事項についての管理や、関係行政機関との連絡など、外国人労働者の雇用労務管理を担当します。原則として管理職(人事課長、労務課長など)から選任することとされています。

外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針

外国人労働者の労務管理~事業主の外国人雇用状況の届出義務

事業主は、外国人労働者の雇入れおよび離職の際には、その氏名、在留資格などをハローワークに届け出を行うと同時に、適正な労務管理をする必要があります。

外国人労働者の労務管理の中でも行政への報告が必要なのが外国人雇用状況の届け出です。この届出の対象者は在留資格「外交」「公用」以外の外国人の外国人労働者です。外国人雇用状況の届出に際しては、外国人労働者の在留カードまたは旅券(パスポート)などの提示を外国人労働者に求め、届け出る事項を確認してください。なお、在日韓国・朝鮮人などの特別永住者の場合には日本での活動に制限が設けられていないため、外国人雇用状況の届出制度の対象外です。
このように、事業主には雇用対策法に基づいて事業主の外国人雇用状況の届出義務がありますので、届け出に漏れがないようにしましょう。なお、雇用保険の被保険者となる外国人労働者(雇い入れ時は雇用保険被保険者資格取得届、離職時は雇用保険被保険者資格喪失届)と、雇用保険の被保険者とならない外国人労働者(外国人雇用状況届出書<様式第3号>)では届け出の書類の書式や書類の届け出期限、届出先となるハローワークも違いますのでご注意ください。

外国人労働者の労務管理の注意:労働問題への対応

外国人労働者の労務管理~メリットは最大に活かす

生産年齢人口が減り続ける日本で、働き方改革が進みダイバーシティの考え方の下、外国人労働者の受け入れ態勢も徐々に整えられてきています。労働市場でも人材の多様性が徐々に広がってきています。特に、製造業、建設業、宿泊業・飲食サービス業や卸売業・小売業などで外国人労働者が増えていることからも日本国内の労働力としての期待が大きいと言えます。また、全般的に見ると海外から来た外国人労働者は就労意欲が高い傾向にあります。国籍に関わらず勤労意欲の高い人を雇用できることは非常に大きなメリットですね。

外国人労働者の労務管理~デメリットへの対応

日本人と外国人労働者では労働慣例も違いますから、予期せぬトラブルが起きることもあります。先ほどの雇用の手続きや労務管理上の煩雑さもさることながら、日本人労働者との言葉や文化の壁による意見や価値観の違いが衝突を招いてしまったり、コミュニケーション不足に陥ってしまったりして情報が行き届かないことなどもありますね。これらに関しても、外国人労働者に対する日常的な労務管理で出来る限りカバーしていく必要があります。

そのためにも、業務をしっかりとマニュアル化したりする必要もありますし、一緒に仕事をするためには私たち日本人も言葉の壁を乗り越える努力をしなければなりません。

外国人労働者の抱える問題~労務管理で解決できるのか?

相談の上位は…

各都道府県労働局・労働基準監督署などには総合労働相談コーナーがあり、外国人労働者向けに外国語で相談を行っています。地域によって対応言語や対応日は異なりますが、英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、ベトナム語での電話相談も行っています。

少々古い資料なのですが、平成21年の厚生労働省の外国人労働者相談コーナー等における相談状況によると、賃金、解雇その他契約一般、労災請求に関する相談が多いようです。この数字は、2009年6月の東京都の発表した外国人労働者の雇用をめぐる相談事例(PDF)で、例年、解雇、賃金不払い、労働契約に関する相談が多いという発表と似た傾向にあります。

上記2つのどちらの調査結果でも解雇や賃金に関する者が大きな値を占めていることが分かります。これらは、雇用契約書をより明確に作成し、外国人労働者にも内容をきちんと把握してもらう努力をすることでかなりの件数を減らせる可能性があります。また、今後は有期雇用労働者への転換も始まりますから、いわゆる正社員と無期転換社員の就業規則だけではなく、外国人労働者にも対応できるように社内の全般的な規則の見直しが必要です。

契約期間途中での解雇問題や、使用期間の満了日の解雇(法律的には、使用期間であったとしても14日を超えて就労している場合には解雇の場合には解雇予告手当が必要です。)などが生じやすいようです。

労働慣行の違いや生活習慣の違い、宗教上の問題、言葉の壁などがあり、これらが発端となるトラブルも多くあります。

これらのことから、外国人労働者の労務管理の上でも、社内に相談窓口の用意、社内で言葉などの問題で対応できない場合には、各都道府県労働局・労働基準監督署などの総合労働相談コーナーを利用するなど多角的な対応が必要です。各種のハラスメント対策でも同じですが、普段からのコミュニケーションの状況次第で改善する事例もたくさんありますので、外国人労働者日本人労働者、あるいは外国人労働者同士が就労しやすい環境を作っていくことが喫緊の課題と言えます。

さいごに

外国人労働者の労務管理は、日本人だけを雇用している場合とは違い、資格の確認や管理から始まります。正常な事業活動を継続するためにも、コミュニケーション問題の改善策を講じてみてはいかがでしょうか。

メルマガ登録