ポイントは長時間労働者の情報提供。労働安全衛生規則等の変更点はこれだ!

ポイントは長時間労働者の情報提供。労働安全衛生規則等の変更点はこれだ!

長時間労働者の情報提供に関して改正がありましたが、具体的にどの部分が変更点なのでしょうか。平成29年3月31日の労働安全衛生規則等の一部を改正する省令を確認してみましょう。

労働安全衛生規則等の一部を改正する省令とは

労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(以下、改正省令と言います。)は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条4及び第66条8第1項の規定に基づいて、同法を実施するために労働安全衛生規則等の一部を改正したものです。
この改正省令は、平成29年3月29日に公布され、改正省令は平成29年6月1日から、施行または適用されています。

昨今、社会全体でも話題になりましたが、過重労働や長時間労働、メンタルヘルス対策などを含め、事業場における労働者の健康を考えることが重要なテーマになってきています。
今回の改正省令は、産業保健を取り巻く状況が変化してきていることに対応して、産業医制度の充実を図ることなどを目的としたものです。

では、改正省令のこれまでとの変更点について順に見ていきたいと思います。

改正省令の変更点 その1)産業医の巡回頻度について

改正省令では、産業医の事業場への巡回頻度が変更されました。詳細は別記事の「通達あり!! 産業医の巡視の規定が変更されました」でお話ししておりますので、ここでは概要だけお伝えしていきたいと思います。

事業者が、毎月1回以上定期的に「必要な情報」を産業医に提供した場合で事業者の同意(※)がある場合には産業医の巡回頻度が毎月1回以上から2カ月に1回以上に変更できることになりました。つまり、条件付きですが産業医の巡回頻度を減らすことが可能になったということですね。なお、ここでいう「必要な情報」は以下を指します。「必要な情報」の詳細は、厚生労働省の安全衛生部労働衛生課が発表した労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案の概要(産業医制度等関係)(PDF)でご確認いただけますので、ここでは概要だけ記載しておきます。

  1. 作業環境、作業方法等の問題点の把握等にとって有用な、週1回以上の衛生管理者の職場巡視の結果
  2. 過重労働対策などにとって有用な、安衛則第52条の2に基づき、事業者が月1回以上把握する長時間労働者に対する面接指導の基準(労働時間の部分)に該当する労働者及びその労働時間数
  3. 上記の2項目の他にも産業医に提供すべき情報として、各事業場の状況に応じて衛生委員会等において調査審議の上、定める事項

また、産業医の巡回頻度の変更は企業から産業医に対して、産業医の作業場等の巡視頻度を変更する一定の期間内は毎月1回以上、必要な情報が提出されていることが必要です。この情報が産業医に対して適正に提供されなかった場合には、産業医の巡回頻度の変更は認められません。なお、衛生管理者の巡視が週1回以上実施されない場合など、安衛則関係の法令の規定に違反している場合も、同様に毎月1回、産業医の作業場などの巡視を行わなければなりません。

※事業主の同意について
改正省令の産業医の巡視回数の変更に必要な事業主の同意についてですが、産業医の意見に基づいて、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「衛生委員会等」といいます。)で調査審議を行った結果を踏まえて行うことが必要とされています。されに、この調査審議は、産業医の作業場等の巡視頻度を変更する一定の期間を定めた上で、その一定期間ごとに産業医の意見に基づいて行わなければなりません。

改正省令の変更点 その2)健康診断結果に基づく医師等からの意見聴取を行う上で必要となる情報の提供について

事業場の規模には関係なく健康診断での異常所見者に対する就業上の措置に関する医師や歯科医師からの意見聴取は事業主の義務になっていることは広く知られていると思います。事業主は、医師や歯科医師からの意見聴取に際し、必要となる当該労働者の業務に関する情報を求められた場合には、速やかに、当該情報を提供しなければならない義務が課せられました。

改正省令の変更点 その3)産業医に対する長時間労働者に関する情報の提供について

今回の改正で、最も注目したい部分です。ここ数年、過重労働や長時間労働者に関するさまざまな問題は社会的にも大きな関心を集めてきました。労働時間の原則は、労働基準法(以下、労基法と言います。)で規定されているように休憩時間を覗いて1日に8時間、1週間に40時間です。

以上の原則を踏まえ、休憩時間を除いて1週間に40時間を超えて労働させた場合には、その超えた時間が月に100 時間を超えた労働者の氏名と当該労働者の100時間を超えた時間に関する情報を速やかに産業医に提供しなければならないという義務が設けられました。

改正省令の変更点 その4)有機溶剤中毒予防規則等関係

特殊健康診断の異常所見者に対する就業上の措置に関する医師からの意見聴取に関して、特殊健康診断において 把握した情報に加えて、労働者の労働時間、業務内容など、医師が必要とする当該労働者の業務に関する情報を求められた場合には、速やかに、当該情報を提供しなければならない義務が課せられました。

それから、この改正省令に関連するものとして、樹脂や繊維などを燃えにくくするための難燃助剤などに使われる化学物質の三酸化二アンチモンを特定化学物質として規制することが発表されています。こちらは、平成29年6月の特定化学物質障害予防規則・作業環境測定基準等の改正で行われました。

以上が、今回の改正省令で特に気を付けておきたい点ですが、この中でも最も注意しておきたいのは長時間労働者の情報提供に関してです。長時間労働者の情報提供について、もう少しお話ししたいと思います。

長時間労働者の情報提供について

長時間労働者の健康を第一に考えましょう。

別記事の「厚労省が本気だ!! 過労死ゼロに向け緊急対策 〜違法長時間労働が月80時間超に見直し〜」でもお話ししたように、厚生労働省では「過労死等ゼロ」緊急対策として違法な長時間労働を許さない取組の強化をしています。新ガイドラインでは、月に80時間超を違法な長時間労働としています。以前は、月80時間超ではなく月100時間超でしたね。また、月100時間超と過労死・過労自殺が2事業場に認められた場合などには行政からの是正指導段階での企業名公表の対象になります。

今回の改正省令では、休憩時間を除いて1週間に40時間を超えて労働させた場合で、その超えた時間が月に100 時間を超えた労働者の氏名と当該労働者の100時間を超えた時間に関する情報を速やかに産業医に提供しなければならないという義務が設けられました。産業医に対して長時間労働者に関する情報提供をしなければならない義務が課せられているわけですが、長時間労働者の肉体的・精神的な疲労を考えると、過重な労働は避けるべきです。

以前から、長時間労働者に対しては医師による面接指導が義務付けられていました。そもそも、なぜ長時間労働者に医師による面接指導を受けさせなければならないかというところに戻ると、安全衛生法(以下、安衛法)では、脳や心臓の疾患の予防のために長時間労働者に対して医師による面接指導を受けさせることを事業主に義務付けています。なお、この規定は、平成20年4月からは以前は猶予されていた常時50人未満の労働者を使用する事業場にも課せられています。

時間外・休日労働時間と健康障害リスクとの関連について
厚生労働省 長時間労働者への医師による面接指導制度について(PDF)より

長時間労働者に関する情報提供は、労働者を守るという意味ではもちろんのこと、事業者としての義務を果たすためにも適切に行わなければなりません。

現在では、国の法規制の執行強化もあり、月の残業時間が100時間超から80時間超へ重点監督対象が拡大されています。このような背景も含め、長時間労働者に関する情報提供が適切に行われることが決まったのではないでしょうか。

昨今の過重労働を受け、これまで企業に対して長時間労働者に関しては月の残業時間が100時間超の場合に、長時間労働者本人の申し出に基づいて医師の面接指導を受けさせることが義務付けられていました。今回の改正省令では、既存の義務に加えて月の残業時間が100時間超の長時間労働者の氏名や時間数に関する情報提供を産業医に対して行うことが義務付けられました。
このことによって、産業医に対して長時間労働者に関する適切な情報提供が効率的に行われることになると推測できます。また、産業医の指導などを受けることで、過酷な長時間労働に対してある程度の歯止めがかけられるのではないでしょうか。

さいごに

長時間労働者に関して適切に情報提供することで、産業医の負担を減らし、長時間労働者の窮状も早めに把握し改善できるようになるのではないでしょうか。労務管理を正確に行い、労働時間の適正化に努めてください。

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