平成30年4月から精神障害者の雇用義務化です

平成30年4月から精神障害者の雇用義務化です

障害者雇用に関して平成30年4月からいくつかの変更があります。今回はその中から、精神障害者の雇用に関してどのようなことに気を付ければ良いのか、ポイントを確認しておきたいと思います。

精神障害者の雇用義務化が平成30年4月から始まりますが、他の障害者雇用と精神障害者雇用では何がどのように違うのか考えてみましょう。

というのは、これまでも「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下、障害者雇用促進法と言います。)で障害者の雇用義務が事業主にはありましたが、その対象になっていたのは身体障害者と知的障害者でした。平成30年4月1日より前に関しては精神障害者の雇用義務はありませんでしたが、もし雇用した場合には障害者の雇用数とみなして数えることができました。ちなみに、障害者雇用促進法では、障害者手帳を持っている人を障害者として考えますので、たとえ障害があったとしても障害者手帳を持っていなければ障害者雇用率制度の対象にはなりません。
(障害者雇用率の計算方法に関しては別記事の「障害者雇用率の計算は誰にでもできる!」でご紹介しています。)

今までは対象外だった精神障害者が今回の改正で雇用義務の対象になり、これまでと変わらないこと、変わることにはどのようなことがあるのでしょうか。

精神障害者とは

精神障害者は、統合失調症や気分障害(うつ病、そううつ病)、てんかんなどのさまざまな精神に関わる疾患が原因となって起こる障害を抱える人のことです。

文部科学省は、「厚生労働省は、発達障害は精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法と言います。)に規定された精神障害者向けの障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳の対象として明記していないが、発達障害は精神障害の範疇として扱っている」としています。これは、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課の特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議高等学校WG(第6回) 議事要旨に記載されています。しかし、上記の文部科学省の指摘する部分については今後どのような扱いがされるか定かではありませんので、ご参考程度にとどめておいてください。

精神障害者の雇用が義務化

平成30年4月1日から精神障害者の雇用が義務化されると聞いて、精神障害のある人の雇用に不安や心配を感じる担当者もいるかもしれません。これまで精神障害者を雇用していなかった場合には、平成28年4月に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下、障害者差別解消法と言います。)がまだ新しい法律だということもあり合理的配慮なども含め、どのように対応したら良いのか知りたいこともたくさんあるのではないでしょうか。

これまでと変わらないこと

<障害者の雇用義務と納付金など>

これまでも企業には障害者雇用の義務がありました。ただし、平成30年4月1日から障害者雇用の法定雇用率が引き上げられることが決定していますので、対象となる事業主の範囲が広がります。ですから、対象事業主の範囲という点では変更がありますが、事業主は一定の割合以上で障害者を雇用する義務があります。

障害者雇用の法定雇用率
厚生労働省 平成30年4月1日から障害者の法定雇用率が引き上げになります(PDF)より

それから、法定雇用率の対象になっていて法定雇用率に満たない場合には障害者雇用納付金制度の下、納付金が徴収されます。現時点では、常用労働者数100人以上の事業主が法定雇用率を達成できない場合が徴収の対象になっています。ただし、常用労働者数が200人超300人以下の事業主は平成27年6月まで、常用労働者数が100人超200人以下の事業主は平成27年4月から平成32年3月まで納付金が4万円に減額されます。常用労働者数が100人以下の中小企業は徴収対象にはなっていません。逆に法定雇用率を超えている事業主には調整金(超過1人当たり月額2万7千円)・報奨金(超過1人当たり月額2万1千円)が支給されます。この納付金などに関する部分については、現時点では変更の予定はないようです。

<障害の種類に規定がない>

これまでは障害者雇用の義務は身体障害者と知的障害者になっていましたが、これまでは精神障害者を雇用した場合、身体障害者または知的障害者を雇用したとみなして数えることができたので、雇用率にカウントされていました。

式に直すと、以下のようになります。

【現行】

現行の障害者雇用率の計算法

【改正後】

改正後の障害者雇用率の計算法

これから変わること

これまでは、先ほどお話ししたように法定雇用率の算定の対象となるのが身体障害者と知的障害者でしたが、精神障害者も雇用義務の対象になるという点が変更部分です。そして、精神障害者の雇用が義務化されたことで法定雇用率が変わります。これに伴って、法定雇用率の対象となる事業主の範囲も拡大されます。

ただ、一点注意しておきたいのは、精神障害者の雇用が義務化されるからと言って必ずしも精神障害者の雇用を強制されるわけではありません。そうは言っても精神障害者の雇用が義務化されることで法定雇用率が上がるわけですから、精神障害者の雇用も上がることが想定されているようです。

つまり、「精神障害者の雇用義務化」という言葉にはなっていますが、実際には法定雇用率の算定基礎に精神障害者が追加されるだけです。これまでの「みなす」という部分の変更ですね。これまでは精神障害者を雇用した場合には身体障害者あるいは知的障害者と「みなす」とされていた部分が、精神障害者を「精神障害者」としてカウントできるようになるということです。

障害者に対しての雇用の間口が広がるわけですから、精神障害者を始めとする障害者雇用が推進されるようになるのではないでしょうか。

障害者雇用のカウントの注意

障害者雇用の雇用率の算定の際には、障害者の障害の程度と労働時間によってカウント数が決められています。

障害者雇用率制度では、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の各手帳の所有者を実雇用率の算定対象としています。ただし、障害者雇用に関する助成金については、手帳を持たない統合失調症、そううつ病(そう病、うつ病を含む)、てんかんも対象として考えます。
障害者雇用のカウントに関してはこれらのいずれかの手帳を持っていることが前提ですが、以下のようにカウントします。

雇用障害者数のカウント方法
独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構webより

身体障害者・知的障害者に関しては重度か否かでカウントに違いがあるのですが、精神障害者に関しては程度の差によるカウントの違いはありません。ただし、算定の基礎とする精神障害者は精神障害者保健福祉手帳を所持していることが条件になります。

精神障害者の雇用に際して

障害者雇用の算定基礎に精神障害者が「追加されただけ」という考え方もできるのですが、できれば精神障害者も特性や能力に合った仕事に就けるのが共存するためにも良いのは言うまでもありません。ですから、精神障害者を雇用する前に、精神障害者の特性や合理的配慮について知識をつけ理解をしておくことをお勧めしたいと思います。

精神障害者の雇用上の合理的配慮

今回は、特に雇用上の合理的配慮のポイントについて触れたいと思います。独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の精神障害者雇用管理マニュアル(PDF)によると、精神障害者を雇用している事業所 のうち、52.4%が雇用上の配慮をしているそうです。配置転換などに関する配慮や、通院や薬の管理などに関する配慮、短時間勤務など労働時間に関する配慮などが多いそうです。

一説によると、精神障害者の場合、新しいもの(環境や人や状況など)に適応するのに時間がかかる場合が多いと言われています。また、緊張しやすかったり、疲れを感じやすかったりする場合も多くあります。ですから、採用後に就業の場所に慣れるまでに障害のない人よりも長い目で見るように周りが心がけたり、労働時間を短くするなどの合理的配慮を推進したりするようにしてください。休憩時間を工夫するためには、就業規則の改訂も必要になることもありますから早めに対応すると安心ですね。

さいごに

精神障害者の雇用義務化までもう少しです。受け入れるための体制を早めに整え、社内環境の整備、既存の労働者への周知など、できる準備からどんどん進めていけると良いですね。法改正日を準備万端の状態で迎えられるようにしてください。

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