健診の胸部レントゲン、40歳未満は省略できるって知ってますか?

健診の胸部レントゲン、40歳未満は省略できるって知ってますか?

そろそろ健康診断の時期となる会社も多いのではないでしょうか。健康診断の検査項目は、会社によってどこまで手厚く行っているかで異なってきますが、まずは法定項目をしっかり行う必要があります。健康診断の項目の一つに「胸部レントゲン」があります。この胸部レントゲンは法定項目ですが、ある条件を満たすと省略できることを知っていますか?今回は、平成22年に改定された労働安全衛生法をもとに、「胸部レントゲン」について説明していきます。

胸部レントゲンでなにが分かるの?

胸部レントゲン(=胸部エックス線検査)はエックス線検査の中で最も簡単な検査方法であり、主に肺や心臓、肺の間にある縦隔などの器官の病気を調べることができる検査です。
胸部全体にエックス線を照射して平面撮影し、肺に異常な影があるかどうか、心臓の形に異常があるかどうかを調べます。
エックス線は人体を通り抜けますが、骨のように通り抜けにくいところがあるため、通り抜けた線を画面に写すと濃淡ができ、体内の様子を知ることができるのです。

【肺】

  • 肺がん
  • 結核
  • 肺炎
  • 気管支炎
  • 気胸
  • 肺気腫

【心臓】

  • 心筋梗塞
  • 心臓肥大
  • 胸部大動脈瘤

【縦隔】

  • 横隔ヘルニア

これら多くの疾患を胸部レントゲンで見つけることができます。

特に結核は、発症者が出現した場合、職場内で感染が拡大する可能性があり、さらに健診で発見すれば有効な治療法があるため、健診で見つけることに大きな意義があります。

胸部レントゲンで所見があった場合は、さらに胸部CT、気管支内視鏡検査、喀痰検査、腫瘍マーカーなどの精密検査を行います。

胸部レントゲンはほとんど人体に影響はありませんが、少量の放射能を浴びるため、妊婦が実施してしまうとお腹の胎児に影響を与えることがあります。妊娠中は行わないよう呼びかけましょう。

胸部レントゲンは40歳未満だと省略可に!

定期健康診断は、労働安全衛生規則第44条第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準で行われます。

定期健康診断の内容
(厚生労働省より)

身長、復囲、喀痰検査、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査は、それぞれの基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略できる項目として定められています。

胸部レントゲンはもともと、全ての人を対象に実施が義務づけられている検査でした。
しかし平成22年4月1日より、胸部レントゲンに関する規定が改正され、省略できるケースができたのです。

改定後の規定

  • 40歳以上 →全員対象
  • 40歳未満 →医師が必要でないと認める場合は省略可(しかし*1~*3の場合は省略不可)

*1 5歳毎の節目年齢(20歳、25歳、30歳、35歳)
*2 感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている
*3 じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている

40歳未満が省略できる条件である「医師が必要でないと認める」とは、胸部エックス線検査にあっては、呼吸器疾患等に係る自覚症状及び他覚症状、既往歴等を勘案し、医師が総合的に判断することをいいます。したがって、胸部エックス線検査の省略については、年齢等により機械的に決定されるものではないことに留意する必要があるのです。

なぜ若年層の胸部レントゲンは省略されたのか

見てもらうと分かるように、胸部レントゲンは40歳未満の若年層に対して大幅に検査が省略になりました。なぜ若年層への検査が省略になったのでしょうか。

まず、定期健康診断で胸部レントゲンを行う利益と不利益を確認していきましょう。

【利益】

  • 結核の発見につながる
  • 偶発的に結核以外の疾患が発見される可能性がある

【不利益】

  • 低線量、低線量率放射線の被曝リスクがあり、がんを引き起こす可能性がある
  • 誤判定が多く、不要な精密検査を増加させる

利益に「偶発的に結核以外の疾患が発見される可能性がある」と記述しましたが、たしかにたまたま所見が写り、病気が発見できるケースも否定はできません。しかし、病気の対象を絞っていないため、受診者中の有病率が少なく健診の効率が悪い、得られる情報も不十分であるという欠点があります。

また胸部レントゲンは肺がんなどを早期発見できる可能性が低く、かなり病状が進行していないと「目視による判断は難しい」という意見もありました。結核以外の病気に対する有用性が低いことも胸部レントゲンのマイナスポイントとして挙げられます。

行政が健診の実施を事業主と労働者に義務づけるためには、検査の目的が明確であり、なおかつその有用性について確かな証拠がなければなりません。また健康診断の受診は拒否できず、健康診断の費用も会社負担となることから、健康診断が労働者の利益につながらなければならないのです。そのため胸部レントゲンは被爆リスクがあるのに対し、若年層への実施理由が十分でなかったことが、省略理由になったと考えられます。

とはいえ、胸部レントゲンは結核の発見に対しては有用性が高く、感染リスクの高い職域で検査を行うことは感染を拡大させないために重要といえます。

結核は以前に比べ罹患率が下がったとはいえ、H28年の人口動態統計の年間推計でも日本人の死因第3位となっています。対象の従業員への周知・勧奨を徹底し、受診率100%を目指していきましょう。

さいごに

医療は日々進歩しており、治療法だけでなく検査や健康に関するエビデンスもどんどん変化していきます。職域における健康診断も例外ではなく、これから少しずつ実施方法が変わっていくことが予想されるため、人事スタッフや産業衛生スタッフは法律に合わせた対応が求められているのです。また法律の改定によって健康診断項目が変わった際は、従業員への周知も忘れないようにしましょう。

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