社員が飲酒運転で事故!! その処分と対処法とは

社員が飲酒運転で事故!! その処分と対処法とは

飲酒運転での交通事故は社会的にも罰せられることが増えてきました。飲酒、酒気帯びなどで交通事故を起こした労働者に対して、会社にはどのような対応が必要なのでしょうか。人事の視点から考えてみましょう。

飲酒運転での交通事故は、実はかなりの件数に上ります。警察庁の発表によると、平成12年をピークに飲酒による事故・死亡事故ともに減少していますが、まだまだかなりの件数に上っていることが分かります。

原付以上第1当事者の飲酒運転による交通事故件数の推移
警察庁 警察庁交通局配布資料飲酒運転事故関連統計資料(PDF)より

特に、平成18年の福岡県での飲酒運転事故は、過去に例がないほどに悲惨で悪質なものでした。この事故から後、飲酒運転や酒気帯び運転は社会からも会社からも制裁を受けることが増えてきました。

数多く起きている飲酒運転の中でも、悲惨なものや悪質なものはニュースで見聞きする機会がありますが、事故の大小に関わらず飲酒運転のような無謀で危険なことをした際には、企業としては自社の社員がどのような事故をどのような状況下で起こしたか正確な情報を把握し、適正に処分することが自社の社会的な信用にもつながると考えられるようになってきています。

社員への処分

会社にはさまざまな人がいて、常にたくさんの問題が起きていることは人事部の皆さんが痛感しているところだと思います。企業としての秩序と規律を維持していくためには、時には何らかの処分(戒告、けん責、減給、出勤停止、停職、降格、諭旨解雇、懲戒解雇)が必要と感じることもあるでしょう。企業には、営業活動を適正に行うために企業秩序を定める必要があるので企業秩序定立権があり、労働者には採用された企業の秩序を守らなければならないという企業秩序遵守義務があります。企業に企業秩序定立権があるからと言って、事前に処分に関する規定がなければ、たとえ労働者が問題を起こしたとしても飲酒運転をしたとしても処分をできないのです。ただし、企業は事前に規則を定めておくことで、制裁として労働者に対して処分を科すことができます。

労働者への懲戒処分

もし、労働者が交通事故を起こした場合、それが飲酒運転だったとしたら、会社ではどのような処分が必要なのでしょうか。

一般財団法人労務行政研究所が2012年に発表した調査によると、酒酔い運転をした場合には、懲戒処分の中では一番重い懲戒解雇を適用する企業が多いことが分かったそうです。また、同調査によると「事故は起こさなかったが、酒酔い運転のため検挙された」「終業時刻後に酒酔い運転で物損事故を起こし、逮捕された」という飲酒運転に対しては、以前に比べてより処分が重くなる傾向が見られたそうです。

社会の流れが、飲酒運転に対して厳罰を求めるようになり、企業としてもたとえプライベートの時間での飲酒運転だったとしても看過できない状況になり、きっちりと処分をしている姿勢が垣間見えてきます。

しかし、このような懲戒処分をするためには、飲酒運転に対して懲戒処分をしておかなければ、いざという時に飲酒運転への処分を行うことができません。

飲酒運転への処分~事前に決める

労働者が飲酒運転をした場合には、一般的に処分が必要と考えられています。しかし、事前に飲酒運転をした場合の処分を決め、その内容を労働者に周知させておくことで飲酒運転への抑止力も期待できます。労働者の誰もが起こしうる飲酒運転とも言えますが、だからこそ、誰にも起こさせてはいけないのです。そのためにも、飲酒運転への処分を事前に決めておきましょう。ですから、就業規則の作成義務がない10人未満の規模の企業の場合にも、懲戒処分の用意が必要であれば就業規則を作成して規定として懲戒処分について記載しておいてください。

労働者に懲戒処分を科す際には、規則に基づいた根拠が必要です。また、必要な手続きをしない懲戒処分をしてしまうと、その懲戒処分自体が懲戒権の濫用となるので無効になります。

法律上は、労働基準法(以下、労基法)の第89条、第91条に簡単な規定があります。

労働基準法第89条・91条
e-gov 労働基準法 より

労基法上は上記の規定のみですので、飲酒運転をした場合の処分に関しては基本的に企業が自社の裁量で決められます。ただ、社会通念上、あまりにも常識から乖離した内容とならないように注意してください。

飲酒運転への処分~規則があることは事前に周知させる

まず、飲酒運転が勤務時間中なのか、プライベートな時間なのかによって処分や対応は変わります。というのは、飲酒運転をしたとしても、プライベートな時間に関して本来は会社が入り込めないものだからです。

飲酒運転への処分に関しては、就業規則や労働契約書に記載をするようにします。具体的に処分の理由となる内容(飲酒運転、酒気帯び運転など)と、処分の内容を作っておきます。ただし、いずれの場合にも労働者が飲酒運転で捕まった時点で、記載がされていなければなりません。勤務時間中はもちろんですが、プライベートな時間の飲酒運転に関しても処分をするきちんとした理由とその内容を記載しておくことが望ましいのではないでしょうか。そして、この飲酒運転に対する処分があり、何に記載されているかということは、確実に周知させておいてください。就業規則は労働者に周知させていなければ効力を発揮しないこともあります。

飲酒運転への処分~内容は具体的に決める

飲酒運転への処分を決める際に、その対応の基準になるものが欲しい人事部の方は多いと思います。飲酒運転が社会的に悪と分かっていても企業としてどのような対応で処分すべきか悩む人が多いようです。人事院のサイトに「懲戒処分の指針」があり、飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係についても記載がありますので、参考にしてみてください。簡単に表にしますと、下記のようになります。

飲酒運転の処分

このように、飲酒運転に関しての処分は、飲酒した労働者に対してだけではなく、飲酒を勧めた者、または飲酒運転していることを知っていて車に同乗した者にも適用できます。ですから、就業規則などに飲酒運転への処分を定めるときには一言で「飲酒運転」と記載するのではなく、できるだけ具体的に明確に規定することをお勧めします。

飲酒運転への処分~処分は適正に行う

社会の流れが飲酒運転に厳しくなっているという理由だけで、労働者を懲戒処分に課すことはできないことはご理解いただけていると思います。では、飲酒運転に対して、処分をする際にはどのようなルールを守らねばならないかについて触れておきたいと思います。

まずは、繰り返しも含まれますが、飲酒運転の処分を適正に行うために必要なことをまとめると以下のようになります。

  1. 就業規則や労働契約書、労働協約などで事前に規則を定め、それを相手方である労働者に周知させておくことが必要です。就業規則が本社でしか見られず支店の労働者は内容を知らないというのでは、周知させたとは言えません。
  2. 飲酒運転をした時点で、規則に懲戒処分についての明確な規定がない場合、処分はできません。
  3. 飲酒運転の処分にはどのようなものがあるのか、客観的に見て合理的で妥当な程度のものが必要です。
  4. すべての労働者を平等に扱い、懲戒処分とする理由と処分の内容を明示します。
  5. いくら飲酒運転をしたからと言って、同じ理由で何度も処分することがないようにしてください。
  6. 当然ですが、処分に関しては個人責任ですから、連帯責任にはできません。

適正な手続きを踏まない懲戒処分は、無効になることもあります。企業の秩序や規律を守るために処分が必要なのですから、その処分自体が規則に則っていることが必要です。そのような事態を招かないように、社会的にも糾弾されることが多い飲酒運転への処分は、規則を守って正確に行うようにしてください。

さいごに

飲酒運転をした際の処分を決めておくことは重要ですが、その規則を周知させることで飲酒運転を抑止させることを徹底させるようにしましょう。なお、労働者の懲戒処分を実行する際には、くれぐれも慎重にお願いします。

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