産業医が教えるADHD社員2つの対処法

言われた仕事が全くできない、マニュアルどおりにできない…。そんな社員まわりにいますよね。適応障害や抑うつ状態という診断書が提出されることありませんか? そんな社員、実はADHDである可能性があります。この記事で、内容をしっかりと整理してみてください。

2005年に発達障害者支援法の施行、2013年には障害者雇用促進法が改正されてから、メディアや就労支援の様々な取組みの結果、広く「発達障害」という概念が浸透しました。特に成人になってから診断されるケースも増え、上司や同僚、人事総務が困っているケースが 増えました。

発達障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)に分けられます。そのうち職場で触れる機会の多いのがASDとADHDです。もちろん多くのケースでは、すべての要素を少しずつ混ぜ合わせてありますので、明確に分けることは難しいです。

職場でみかける発達障害の種類と特性

今回は、ADHDについて職場での悩みを解消しましょう。

目次

職場だけじゃなく日本全体のADHDの有病率

発達障害としてADHDの診断は、ADHDの特徴を持つことで、日常生活、社会生活が脅かされて、何らかの支援が必要な状況を言います。ADHDのチェックシートをやったら当てはまった。だから俺もADHD…というのは違います。ADHDの特徴を多かれ少なかれ、誰もが持っているものです。

日本とアメリカ、それぞれ「こども」と「おとな」での有病率はこんな感じです。ADHDは、年齢とともに有病率は減少していきます。

ADHDの事情

アメリカは、1. 教育スタイル・考え方がより自由、2. 製薬企業や国による啓蒙啓発が盛ん、3. 診断後の支援する方法がより整っていることから日本よりも有病率が高くなっていることが予想されます。

日本のADHDは、詳細な疫学データがないため少し正確性が欠けますが、この数値よりも高いことでしょう。

日本の職場であれば、約50〜100名に1人というイメージでしょうか。100名くらい事業所であれば、2〜3名くらいです。

職場で見かけるADHDは遺伝が原因?

発達障害全般で言えば、中枢神経の機能的発達障害とされ、遺伝要因が強く、双子の研究から80%が発症に寄与すると言われていました。しかしこの中でも学習障害である読字障害の遺伝要因は20〜50%と言われ、環境要因の方が強いという報告もあります。

環境要因としては、妊娠中の喫煙や受動喫煙、妊娠中の飲酒が指摘されています。両方そろうと学習障害は2.6倍に増えると言われています。

そのような中で、最近の研究でわかったのは、成人ADHDの遺伝要因の関与は30〜40%しかなく、70〜80%は環境要因によって引き起こされたことです。

当然、職場の上司や同僚、人事からすれば、遺伝が原因だろうが、環境が原因だろうが関係ないと思われるかもしれま せんが、環境要因であることのほうが職場にとっては良いかもしれません。なぜなら適切な業務内容や量、やり方を考えることで乗り越えられる可能性が高いからです。

職場のADHD3つの特徴

ADHDについて知っておくべき特徴は以下の3つです。

  1. 多動性:終わっていないのに次の作業に移ろうとする、せっかちでイライラしやすい
  2. 衝動性:相談しないで勝手に決めてしまう、考えていないで行動しているようにみえる
  3. 不注意さ:片付けがとにかくできない、約束時間を守れない、忘れ物が多い

ADHDの3つの特徴

周りから見ると優先順位がつけることができず、目の前のタスクばかりに目がいって、仕事が中途半端に終わらせてい るように見えます。成人では、多動性が弱まり、逆に不注意さが目立ちます。こどもと比べて、おとなはより複雑でイレギュラーな業務があるため、不注意さが 顕著になります。過重労働で徹夜を続けた社員のケアレスミスが増えるような状況に似てきます

職場でADHDの社員がいた場合の対処法

職場で先ほどの3つの症状が強く出ていて、明らかに業務上支障をきたしている場合は、人事を通して、産業医や保健師などの産業保健スタッフに相談しましょう。

その理由は、これらの症状が他の原因で発生している可能性があるからです。先ほど徹夜を続けた過重労働者に似ていると言いましたが、上司との人間関係やその他職場の環境が原因で発生している場合には、この点を考慮する必要があるからです。

またADHDをきっかけにして、その他の病気を併発させることは良くあります。例えば、うつ病や適応障害、パーソナリティ障害、アルコール依存症、さらには自閉症スペクトラムも一緒にあったりします。

その上で、いくつかのポイントをあげます。とくに「不注意さ」は、業務上非常に困るものです。この「不注意さ」をやわらげるだけでも上司も同僚も楽になります。

1 ADHDの「不注意さ」に対して

  • メモを取るように指導する
  • 同時進行に仕事をさせない、作業に順序を作る、細かく区切っていく
  • 始業前5分にタスクの整理、終業10分前に今日の整理と明日のことの整理
  • パソコン上で作業をさせるのではなく、一旦稟議書などルーティンで入力するものは印刷して全体像が見えるようにした状態で優先順位を紙に書く

 ↓↓↓例) 注意散漫になるために、業務を遂行する順番を必ず決めるといったことが有効です。

ADHDの指導方法

2 ADHDの「衝動性」に対して

  • 会議で発言する前に、感じたことをまずはメモをして、会議後に相談することを決める
  • 予約、予定、会議等を事前にスマホのカレンダー機能を活用し、アラーム設定しておく

職場でADHDの社員に営業車を運転させることは…

そもそも「事故を起こしやすい社員の場合には、運転をさせない」ことが大原則ですが、ADHDは、1.47倍重度な事故を起こしやすいと指摘されています。ただし、内服薬を飲めばそのリスクも半分になります。(JAMA Psychiatry. 2014;71(3):319-325)

営業に出かける際の運転はくれぐれも注意させてください。

職場で見かけるADHDに向く仕事

それではこのようなADHDですが、どのような仕事や業務が向いているのでしょうか。

キーワードは、「状況が変化してよい業務」、「ペーパーよりも会話」、「形として見えるもの」

  1. 医師・看護師・消防士・警察官
  2. コールセンターやセールス
  3. アーティストやエンターテイナー、スタイリスト、イラストレーター
  4. 建築や自動車整備士、漫画家、画家、研究者

職場でADHDの社員が遅刻する

もちろんADHDの社員に対しては、その業務内容については配慮はするものの「労務問題」を見逃して良いわけではありません。例えば、月曜日の遅刻が多い場合には、それを上司・人事部が指摘し、改善を求めることは不可欠です。

仮に「ADHDの診断を受けたので」と診断書を提出したとしても関係ありません。就業規則を守る、守らせることには変わりません。環境要因によって行動を変えることは出来ます。どうしても出来ない場合などへの配慮は当然ながら考えることも大切ですが。

さいごに

ADHDといった発達障害で最も企業人事が威力を発揮するのは、本人の希望およびその社員の傾向から適材適所にひとを配置することです。多くの企業でこのような大成功例があります。まずはADHDのことを知って、対応して下さい。

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