フレックスタイム制の基本が8分でわかる!

フレックスタイム制と聞くと、柔軟な働き方で通勤ラッシュに遭わずに済むというイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。でも、実はメリットは他にもたくさんあります。その一方でデメリットも……。

目次

フレックスタイム制とは

日本の労働時間制の歴史を振り返ると……

フレックスタイム制は、労使協定に基づいて労働者が自分自身の始業時刻と終業時刻を原則として自由に決めることができるものです。日本では1987年の労働基準法(以下、労基法といいます)が改正されたことで1988年4月から導入されているのですが、最初のころはなかなかフレックスタイム制を導入する企業がありませんでした。

ちなみに、1947年に労働基準法(以下、労基法)が作られた時には1日に8時間、週に48時間が最長の労働時間とされていました。しかし、1987年の労基法の改正によって、1日に8時間の上限はそのままに週の労働時間が最長で40時間に変更されました。

とはいっても、いきなり週の労働時間を大幅に減少させることは難しいので、段階的に週に40時間という労働時間に移行されていき、1997年4月からは完全に週の労働時間が40時間とされるようになりました。そしてその後、1988年4月からフレックスタイム制の導入ができるようになったのですが、最初のころはなかなか既存の働き方から抜け出せなかったようです。

フレックスタイム制の概要

今回のテーマであるフレックスタイム制とは、一般的には「出退勤の時間が自由」と認識されているのではないでしょうか。少し補足するとすれば、フレックスタイム制は「清算期間(最大で1カ月以内の一定の期間で労使協定で定めたもの)内での総労働時間を決めておいて、その清算期間内での各日の労働時間を労働者が決められる」というものです。労基法第32条第3項に規定があります。

第三十二条の三 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

 この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲

 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月以内の期間に限るものとする。次号において同じ。)

 清算期間における総労働時間

 その他厚生労働省令で定める事項

労働基準法 第三十二条の三

東京労働局で出しているフレックスタイム制のモデルケースは以下のようになっています。

フレックスタイム制のモデルケース
東京労働局 フレックスタイム制 フレックスタイム制の適正な導入のために(PDF)より

フレックスタイム制では、コアタイムの設定が必須ではないので、全ての時間帯をフレキシブルタイムとすることも可能です。また、コアタイムがメインでフレキシブルタイムが極端に短いと、労働者には実質的に始業の時刻と終業の時刻を決めることができませんし、始業もしくは終業の片方にしか労働者の自由が認められていないなどの場合にはフレックスタイム制とはみなされない場合もあります。ですから、フレックスタイム制を導入する場合には、コアタイムとフレキシブルタイムのバランスなどにも注意してください。

フレックスタイム制の労使協定

フレックスタイム制の労使協定に必要な項目について、もう少し詳しく見ておきましょう。

その1)対象となる労働者の範囲

フレックスタイム制の対象となる労働者の範囲は、労働者全員、個人、課ごとなどいろいろな範囲が考えられます。取引先や顧客との連絡を密にしなければならない部門はフレックスタイム制にあまり適しませんが、労使で十分に話し合って協定に定めてください。

その2)清算期間をどうするか

清算期間の長さは、労基法三十二条三項二にあるように1カ月以内で決めなければなりません。1カ月以内で賃金の計算期間に合わせるのが一般的で、効率も良いのではないでしょうか。

その3)清算期間の起算日

それから、清算期間には起算日が必要ですので、例えば「毎月1日」など具体的かつ明確になるように決めてください。

その4)清算期間での総労働時間

清算期間での総労働時間とは、フレックスタイム制に関する労使協定で定められた清算期間内に労働者が労働しなければならない時間のことです。一般的にいう所定労働時間のことです。清算期間を平均しての1週間の労働時間は40時間(特例措置対象事業場※は、44時間)以内です。

※特例措置対象事業場:常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く。)、保健衛生業、接客娯楽業のことです。 労使協定では、清算期間での法定労働時間の範囲内で、1カ月○○時間と一律の時間を定めることもできますし、清算期間内に所定の労働日を決めて、所定労働日1日当たり○時間と決められます。

その5)標準となる1日の労働時間

標準となる1日の労働時間を決める目的は、フレックスタイム制の適用対象者が年次有給休暇を取得した際に何時間労働したと考えて賃金を計算するのかを明確にしておくことで、時間数を定めればそれで構いません。そして、フレックスタイム制の適用対象者が年次有給休暇を1日取得した場合には、標準となる1日の労働時間労働したものとして取り扱わなければなりません。

その6)コアタイム

コアタイムは、労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯のことです。なくても構いませんが、コアタイムを作る時には、その開始と終了の時刻を明記しなければなりません。コアタイムは労使協定で、労使の合意の下であれば自由に決められます。コアタイムは毎日一定である必要はありませんから、月曜日と金曜日で違う時間帯を指定しても構いません。コアタイムを分割することも可能です。

多くの場合には必ず出社しなければいけない時間(コアタイム)と、いつ出社もしくは退社しても構わない時間(フレキシブルタイム)を設定して運用しています。ただし、ここで注意しなければならないのがコアタイムだけ働いていれば良いのではなく、清算期間ごとの労働時間が足りるように働かなければならないということです。フレックスタイム制では清算期間での総労働時間が事前に決められていますので、コアタイムだけの労働では労働時間の合計が事前に決められている必要な総労働時間に届かないことがあるからです。

また、コアタイムが標準となる1日の労働時間と同じくらいの場合は、フレックスタイム制と認められないこともあります。

その7)フレキシブルタイム

労働者がその選択して労働できる時間帯のことをフレキシブルタイムといいます。フレキシブルタイムを設定する場合には、コアタイムを設定する場合と同様に開始と終了の時刻を定めなければなりません。

フレックスタイム制を導入する際には

いずれの場合にも、フレックスタイム制を導入する場合には必要事項を網羅した労使協定を締結し、就業規則にもきちんと記載しておきましょう。

なお、フレックスタイム制の導入に際し労使協定は締結する必要がありますが、その協定を所轄労働基準監督署長に届け出る義務はありません。ただし、就業規則を変更した場合には、その就業規則と労働者の過半数を代表する者の意見書を添えて所轄労働基準監督署長への届け出が必要ですのでご注意ください。

フレックスタイム制のメリットとデメリットを考えよう

フレックスタイム制のメリットとは

フレックスタイム制のメリットと言えば、まず何といっても労働者が自分の都合で時間を融通できることです。勤務時間がコントロールできれば、コアタイムによっては通勤ラッシュを避けることができますし、通院や空いている時間の金融機関や役所などでの用事も済ませられますね。自分の体調で勤務間インターバルをとることもできますから、健康に配慮した働き方がしやすいといえます。

2つ目は労働時間が柔軟なので優秀な人材の流出防止や、新たな人材の確保のしやすさにつながります。人手不足の中で、優秀な人材を採用したり、維持し続けられたりするのは非常に魅力的です。最近では、結婚や妊娠・出産・子育てや介護などの家庭の事情で離職せざるを得ない人も増えています。こうした方々にも時間が融通しやすいフレックスタイム制は魅力的だと思います。

3つ目は働き方に自由があるためにワーク・ライフ・バランスを高めやすいといえます。事業場から離れた場所に住んでいても始業の時刻を自分で決められると、日々の混雑した通勤から解放され職場に着いた時点で疲れているということもなくなりますし、帰宅に関しても同様のことが言えます。労働者が自分自身で始業時刻や終業時刻を決められるので、ワーク・ライフ・バランスを向上させやすいため、労働者の自主性や意欲の向上が期待できます。また、主体的に業務に取り組むことで業務効率が上がることもあります。

4つ目は残業時間の削減がしやすくなることです。夕方や夜に取引先との打ち合わせなどがある場合、今まででの働き方であれば残業せざるを得なかったケースですが、フレックスタイム制の下であれば始業の時刻を調整することで残業が発生しないこともあります。労働時間の管理に関しては一般的な勤務のその日単位ではなく清算期間で行えますから、企業にとっては計算がしやすくなるかもしれません。

5つ目は労働者の自由な発想を促進できることです。これまでの枠にはまった働き方ではないので労働者は主体的に働く中で、さまざまな工夫をしたりアイデアを生み出したりすることもあります。

フレックスタイム制のデメリットとは

では、フレックスタイム制のデメリットとはどのようなものが挙げられるのでしょうか。

1つ目は労働者の出退勤の時刻が各労働者に委ねられているので、取引先や顧客からの問い合わせや打ち合わせに不都合が生じることがあります。時間帯によっては、常に不在という状況も生じてしまいます。先方がフレックスタイム制を導入していない場合、担当者同士で連絡を取りにくくなることが容易に想像できます。ですから、フレックスタイム制を導入できる職種や業種にはある程度限られてしまいます。また、社内での労働者同士のコミュニケーションがとりにくいこともありますから、心の問題を抱える人に対する気づきが遅れがちになることが考えられます。心の問題は早期の発見と対処が重要ですので、フレックスタイム制の場合には特に注意する必要があります。

デメリットの2つ目は、自己管理能力が問われることです。フレックスタイム制は自分自身で始業の時刻や終業の時刻を管理した上で、清算期間あたりの総労働時間も確保しなければなりません。ですから、時間にルーズな人にとっては計画性なく働くことに繋がりかねません。

デメリットの3つ目は、労働者が自分で決めた始業の時刻、終業の時刻によっては照明やエアコンなどの使用時間が長くなり、光熱費がかさむ可能性があることです。特に事業場の多い企業の場合には労働者も多いことが多く、そのような場合には全体としてみた場合に事業場が稼働している時間が長くなり、結果的に光熱費が余計にかかることもあります。

デメリットの4つ目は、労働者の勤務評定が難しくなることです。残業時間などを管理しにくくなるため、本来の時間内でどのくらいの生産性があったのかなどを含め、管理監督者への報告・連絡・相談がしにくくなり、勤務評定をするのもこれまでとは違う方法を考えなければなりません。

フレックスタイム制での注意

フレックスタイム制でも残業代はかかる

フレックスタイム制を導入すると、働き方に自由度が増します。時間が自由になることで、労使双方にとってメリットがありますし、効率的な働き方を考えて業務の生産性が高まることもあります。ただ、注意しなければだらだら働くことになりかねません。

フレックスタイム制の場合、例えば1日に10時間の労働をしたとしても、それだけでは残業代は発生しません。しかし、事前に労使で決めた清算期間での総労働時間数を超えた場合には残業代が必要になります。つまり、清算期間あたりの総労働時間を実際の労働時間が超過していたら、その超過していた分が残業になると考えます。ちなみに、仮に今月の実労働時間が清算期間での総労働時間を超えていて、その超えた分を来月の総労働時間に繰り越して残業代を支払わないということは認められていませんのでご注意ください。その清算期間で、賃金もきちんと支払うようにしてください。

さいごに

フレックスタイム制は、ワーク・ライフ・バランスを高めることもできますし、非常に便利で働きやすい就業方法です。しかし、残業の考え方などについての勘違いもあるようですので、ここでもう一度確認しておいていただけたらと思います。

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