過労死をなくせ!! 企業が過労死対策でできること その1

過労死をなくせ!! 企業が過労死対策でできること その1

ニュースを賑わした大手広告会社での過労死。これまで以上に、過労死の問題がニュースで取り上げられることも増え、過労死への一層の対策が求められています。企業にはどのような過労死対策ができるのでしょうか。

過労死の対策が急務!

大手広告会社での過労死

ニュースで社名も公開された大手広告会社「電通」での過労死の事件。皆さんの耳にもニュースが残っているのではないかと思いますが、概要を簡単にまとめました。社会的に知名度のある大手企業での信じられないようなニュースに各種の報道が毎日のようにされました。

この電通での過労死事件がいかにショッキングなことだったか、インターネットで検索してみると下記のような結果が出ました。

  1. Yahoo! で「電通」と検索すると検索候補として「電通 過労死」がトップに表示され約571,000件
  2. Yahoo! で「過労死」と検索すると検索候補として「過労死 電通」がトップに表示され約638,000件
  3. Googleで「電通」と検索すると検索候補として「電通 過労死」がトップに表示され約 594,000 件
  4. Googleで「過労死」と検索すると検索候補として「過労死 電通」が7番目に表示され約 638,000 件

これらの数字を見ただけでも、世間が過労死に関心を持っていることが分かります。ニュースで報じられた電通での過労死について少し振り返ってみたいと思いますが、その前に、ここに至るまでの電通での過労死に関係する事案を確認しておきましょう。

電通での労災事案~過労死対策はなかったのか?

24歳の男性社員の自殺 → 労災と認定

電通の新入社員が過労によって自殺した事件です。1991年8月、入社して2年目になった男性社員が、自宅で自殺しました。この男性社員の残業時間は月に147時間にも及んだとされています。1990年4月に入社してから1年5カ月たった1991年8月のことでした。長時間にわたる残業や徹夜での勤務など激務が続いていた中で、極度の過労常態となって自ら命を絶ってしまった事件と発表されています。本来であればこのような事件が起きる前に会社として長時間労働を是正し、過労死を防ぐ対策を講じるべきでした。

こころの耳 電通事件によると、24歳の男性新入社員が慢性的な長時間労働に従事しうつ病になり、自殺に至り、両親がこの男性の勤務先であった電通に対して損害賠償を請求した事案です。最終的に、電通が約1億6,800万円を支払うことで和解となりました。最高裁判所で、初めて会社の安全配慮義務違反が認定され、約1億6,800万円という多額の賠償金が電通には課せられました。

30歳の男性社員の過労死 → 労災と認定

そして、この男性社員の自殺から22年ほど後の2013年6月には、東京本社に勤務する30歳の男性社員が病死しましたが、この男性労働者の死亡も長時間労働による過労が原因として労災として認定されました。詳細は遺族の意向によって伏せられていると報道されましたが、このような事案もありました。先の男性の過労死の事案を受けても、会社をあげての過労死への対策がなされていなかったことが推察できます。売り上げを偏重したのか、業界トップへのこだわりなのか、そこに労働者の健康に配慮する会社側の姿勢はまるで見えません。

以前の労働者の死亡からの反省や改善が見られないことや、電通に以前から伝わる鬼十則と呼ばれるものまで、私たちは報道でさまざまなものを見て、考えさせられてきました。しかし、このような事案が2件もあったにも関わらず、過重労働を原因とする悲劇がまた起こってしまいました。

24歳の女性社員の自殺 → 労災と認定

24歳の男性労働者の自殺から24年後の2015年12月、新入社員の女性が過労により自殺しました。最近のニュースでも大々的に報道されましたので、そのショッキングな内容もあり皆さんの記憶にも新しいのではないでしょうか。しかも、電通での過労死は今回が初めてではありません。これまでの2人の男性社員の過労死が労災として認定されていたにも関わらず、心身に過度の負担を課す過重労働が是正されず、過労死への十分な対策がされていたとは思えず、これまでの2名の貴重な命に対して、会社として何らかの重みを感じていなかったのかと疑問を感じざるを得ません。

この女性社員は過労死ラインとされる月間80時間を超える月約105時間の残業による過重労働をしていたと考えられており、三田労働基準監督署はうつ病を発症していたと判断し、2016年9月30日に労災を認定しました。この女性労働者が自殺に至るまでの仕事での状況を自分自身でSNSで発信していたこともあり、報道はより大きなものとなりました。そして、東京労働局や各地域の労働局が本社と支社のうちの3カ所、主要な子会社5社に臨検(労働基準法に基づく立ち入り調査)を実施しました。この臨検の際には、「過重労働撲滅特別対策班」(通称:※かとく)も含まれています。ニュース映像でも繰り返し流れていましたが、ダンボール箱を手にした監督官たちが電通の社屋に入っていった様子は、臨検に向かう際のものです。このような状況になるまで、会社が過重労働の実態を知らなかったはずもなく今後の捜査の進展が期待されています。

※「かとく」は、過去に大手企業4社を労働基準法違反で東京地検に書類送検したことでも知られています。

行政の対応

今回は女性社員の自殺の労災認定を受けて臨検が行われたのですが、報道によると電通はこれまでにも長時間労働をめぐって複数回にわたって労働基準監督署から是正監督を受けていたようです。これまでの過労死の苦い経験を生かし、過労死を撲滅させるような対策が講じられていればこのようなことにならなかったのではないでしょうか。

亡くなった女性のSNSやこれまでの是正勧告などから考えると、電通では違法な長時間労働が常態化していた可能性があると考えるのが妥当ではないでしょうか。この複数回にわたる労働基準監督署からの是正勧告は労働基基準法(以下、労基法)第32条違反、つまり労働基準監督署に届け出ていた時間外労働の上限時間を超過して、労働者を使用していたということです。(労基法第32条は、労働時間に関する規定です。)複数回もの是正勧告を受けても長時間労働は常態化したままで、過労死への対策や会社の安全配慮義務に無頓着だった会社の姿勢が垣間見えます。今回の事案が書類送検されるか否かは、重大性と悪質性がポイントになると考えられます。

「働き方改革実現会議」の改革(議長:安倍晋三首相)の目玉として長時間労働の是正がうたわれていることもあり、国としても看過できない問題と判断されていることが伺えます。また、この女性社員の自殺を受けて行われた労働局の臨検に関して菅義偉官房長官が「結果を踏まえ、過重労働防止に厳しく対応する必要がある」と記者会見で発言したことからも、電通だけの問題に留まらない非常に大きな問題として社会から認識されていることも分かります。健康経営やストレスチェックなど近年ではさまざまな形で労働者の心身の健康に留意しようとする動きがみられていますが、その中でも特に重要なのが過労死への対策です。

このような社会状況の中、本年10月7日付で「平成28年版過労死等防止対策白書」が発表されました。次回は、その内容を確認します。

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