過労死をなくせ!! 企業が過労死対策でできること その2

過労死をなくせ!! 企業が過労死対策でできること その2

2016年10月7日、奇しくも電通社員の過労自殺が労災認定されたと会見があった日に「平成28年版過労死等防止対策白書」が発表されました。過労死などの現状やその防止に講じた施策の状況を初めて取りまとめたこの白書から、従業員を過労死させない働き方を読み解いていきましょう。

過労死への対策を考える

「平成28年版過労死等防止対策白書」が発表

この平成28年版過労死等防止対策白書は、過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号。議員立法により平成26年に成立・施行しました。)第6条に基づいて、過労死等の概要、政府が過労死などの防止を目的として行った施策の状況を取りまとめて、国会に年次報告するための法定白書です。この過労死等防止対策白書は、過重労働やうつ病、過労死が社会的な問題となっている中で、過労死などの現状やその防止に講じた施策の状況を初めて白書として取りまとめたものです。今までには、今回のような白書がないので比較はできませんが、昨今の労働問題の多発を考えるとようやく作成されたという思いを持つ人もいることと思います。白書という形での報告は初めてですが、厚生労働省では長時間労働の問題や各種のハラスメント、健康経営にも注力していますので今後に期待したいところです。

今回の白書のポイントになっているのは以下の点です。

過労死等防止対策白書のポイント
厚生労働省 「過労死等防止対策白書」を公表しますより

ご存じの方も多いとは思いますが、「過労死」というのは長時間にわたる過密な労働や、繰り返される深夜勤務、単身赴任や海外出張など、労働者が過度の疲労やストレスを原因として死亡してしまうものを指します。近年では、脳出血や心筋梗塞を始めとする脳や心臓に関する疾患の中で大きなウェイトを占めています。また、過労や極度のストレス原因として正常な判断ができなくなってしまったりうつ病を発症したりして自殺してしまうこともあり、状況によっては、こちらも過労死として労災の認定がされます。

では、次に、ここから先の話を進めていく前に「過労死ライン」についてお話ししておきたいと思います。

過労死ラインとは

過重な労働によって労働者の心や体の健康が害されるリスクが高まるとされる時間外労働時間を指すものです。これは、労働災害の認定において、労働と関連のある死なのか、その因果関係を判定する際に使用されます。

労働省の通達(平成13年12月12日付、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あて通達)で、脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準についてというものに具体的な労働時間数についての言及があります。該当箇所のみ下記にまとめました。

発症前の1~6カ月間にわたって時間外労働が1カ月あたり約45時間を超えない場合
→ 業務と発症との関連が低いと判断

発症前の1~6カ月間にわたって時間外労働が1カ月あたり約45時間を超える場合
→ 時間外労働の時間が長いほど業務と発症との関連性が徐々に強まると判断

発症前の1カ月間におおむね100時間、もしくは発症前2~6カ月間に1カ月におおむね80時間を超える時間外労働があった場合
→ 業務と発症との関連性が高いと判断

前置きが長くなってしまいましたが、ここからは、「平成28年版過労死等防止対策白書」からわかることについてお話を進めていきたいと思います。

過労死への対策~労働時間を考える

80時間超の時間外労働は20パーセントも

先日の電通事件がまだ記憶に新しいと思いますが、実は先ほどお話しした「過労死ライン」とされる月間の時間外労働時間80時間超の正社員がいる企業が日本には20パーセント以上もあります。そして、40パーセントほどの正社員が高ストレス状態で就業していることが各種の資料などで明らかになっています。人によって違いますが、ストレス耐性の低い人の場合には、高ストレス状態では正常な判断ができなくなるケースもありますので注意が必要です。

そのような中で発表された「平成28年版過労死等防止対策白書」の中身を見ていきましょう。

過労死の現状を知る

皆さんもご存じのように、長時間の過重な労働は労働者の心や体に疲労を蓄積させ、場合によっては過労死を招くこともあります。そして、過重な労働は心や体の健康を害し、うつ病を発症し自殺に至ってしまうケースもあります。今回は、電通の事案がニュースになりましたが、実際にはもっとたくさんの事案があります。労働者が自分の労働者としての地位を守るために事業主に長時間労働の改善を訴えられないことや、自分でも無意識のうちに疲労を蓄積させてしまっていることも一因でしょう。

脳や心臓に不具合が生じて、死亡に至ってしまい、それが労災として認定されたものが下記です。(この資料からわかるのは、脳・心臓疾患に関する労災支給件数のみですので、労災全体での死亡件数とは異なります。)

労働者が過重な労働をしたことに起因して、脳血管に疾患を生じさせてしまったり、虚血性心疾患などを発症してしまったりしたとして労災の請求に至るケースが目立ちます。

脳・心臓疾患に係る支給決定件数の推移
厚生労働省 平成28年版過労死等防止対策白書(PDF) より

この資料からも分かる通り、労災認定された脳・心臓に関する死亡はかなりの件数があります。もちろん、労働者が過労を一因として死亡した場合、これらのような疾患以外にも注意力が散漫になって怪我などをした結果としての死亡を原因としたものもあります。ですから、過労になったことを原因とした死亡の事案がここに描かれたものだけではないことを忘れてはなりません。過労による寝不足で事故を起こしてしまったりすることもあるでしょう。そのような事案はここには含まれていません。

近年、よく耳にするのが心の健康を害してうつ状態になり自殺してしまうケースです。順に過労死について、現状を見ていきたいと思います。

労働時間の状況

日本人は働き過ぎと言われていますので、統計的にはどのようになっているのかまずは確認しておきましょう。

労働時間そのものは平成5年から緩やかに減り続けています。最近では、平成27年には前年比7時間の減少です。わずかずつではありますが、この3年間に関しては3年連続で労働時間は減少しています。所定労働時間は長期に渡って減少の傾向が続いてる一方で、時間外労働時間は増減を繰り返し続けていて年間で110時間から130時間と発表されています。このことからも、先日の電通での1カ月に100時間超の時間外労働がいかに過酷なものだったのかが推測できます。

年間総実労働時間の推移
厚生労働省 平成28年版過労死等防止対策白書(PDF) より

近年の労働者全体での一人当たりの総労働時間数の減少はパートタイム労働者数の増加によるものと考えられています。また最近では配偶者控除に関しての議論がされていますので、今後、一般労働者とパートタイム労働者の双方の労働時間数に変動があるかもしれません。

現時点では、一般労働者の総労働時間数はおよそ2,000時間ですが、近年の労働時間の微減はパートタイム労働者の増加によるものと考えられています。また、30歳代、40歳代の男性は週に60時間以上就業している割合が高く、いわゆる働き盛りと言われる世代の負担が過大なものとなっていることは、下の資料からも分かります。

脳・心臓疾患の年齢別請求、決定及び支給決定件数
厚生労働省 平成27年度「過労死等の労災補償状況」を公表 別添資料1(PDF)より 一部加筆

働き過ぎの労働者の28パーセントが…

では、このような状況の中で、労働者が心身の疲労をとり、リフレッシュもできる年次有給休暇の取得状況がどのようになっているのか見てみましょう。適切なリフレッシュは心身の疲労を癒し、過労死を予防する対策にもなります。また、労働者の当然の権利でもありますが、特別な理由がなければ労働者から申請された年次有給休暇を事業主はむやみに拒否できません。企業によっては、積極的に年次有給休暇の計画的付与を行っている企業もありますが、社会全体ではどのような状況なのか、下のグラフをご覧ください。

年次有給休暇の取得率等の推移
厚生労働省 平成28年版過労死等防止対策白書(PDF) より

上のグラフからは、年次有給休暇の付与日数が少しずつとは言え増加の傾向にあることが分かります。付与日数は微増したのですが、年次有給休暇の実際の取得率は50パーセント以下ですので、年次有給休暇を付与されるだけであまり活用できていない実態が見えます。また、今回の白書からは、週の労働時間が長い労働者ほど年次有給休暇の取得率が低い傾向にあることも分かりました。特に、週の労働時間が60時間以上の労働者の約28パーセントもの労働者が年次有給休暇を全く取得していないことも分かっています。本来であれば、心身の疲労をより早い時期に解消する必要のある労働者たちはなかなか休めない状況ということなのでしょうか。より疲労の度合いが高い労働者が過労死することのないように、早急な対策が講じられて然るべきです。

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