過労死をなくせ!! 企業が過労死対策でできること その3

過労死をなくせ!! 企業が過労死対策でできること その3

前回は過労死白書から労働時間が過労死に与える影響について見ていきました、今回はメンタルがどう影響するか、過労死白書の内容を見ながら、過労死対策について考えていきましょう。

過労死への対策~こころの問題

過半数の労働者が心に問題を抱える現状

昨今の過労死への対策として避けて通れないのがメンタルヘルスの問題です。労働者は、心身の疲労が強いとよりストレスを抱えやすくなることは皆さんもご存じだと思いますが、統計ではどのような結果だったのかを見てみましょう。

仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合
厚生労働省 平成28年版過労死等防止対策白書(PDF)より

この資料の数字を見て、皆さんはどう感じますか? 仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合が減っているから良いことだ! と感じるかもしれませんが、依然として50パーセント以上もの労働者が仕事や職業生活に関して心に何か問題を抱えていることが分かります。今回の統計では、最も多かったのが「仕事の質・量」(65.3%)、次に「仕事の失敗、責任の発生等」(36.6%)、そして「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」(33.7%)となっていました。あまりにも大きな数字に驚いた方もいるかもしれませんね。ちなみに、実際に周りの人に労働者が自らのストレスについて相談したケースは、およそ76パーセントです。特に家族や友人、同時や同僚といったケースが目立ちます。

メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所は6割強

では、どのくらいの事業所が労働者の心の問題、つまりメンタルヘルスケアに関して何らかの対策を行っているのでしょうか。

健康経営の二本柱とも言われるメンタルヘルスケアですが、今回の平成28年版過労死等防止対策白書の発表によると。平成25年にメンタルヘルスケアに取り組んだ事業所は60.7パーセントで前年(47.2パーセント)よりも増加しています。メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所は平成14年以降増加の傾向にあります。

ここで気になるのは、このメンタルヘルスケアの内容です。メンタルヘルスケアの中でも、近年、特に重要なものとして捉えられているのがラインケアです。ラインケアのメリットは、普段の就業の場所の実態をよく知る管理監督者が直接行うことで、職場内で状況に応じた円滑なメンタルケアができることです。普段から労働者と接している者だからこそのものです。

メンタルヘルスケア

平成28年版過労死等防止対策白書では、37.9パーセントの事業所で取り組んでいることが分かります。

メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所における取組内容
厚生労働省 平成28年版過労死等防止対策白書(PDF)より

最近は、民事上の個別労働紛争に係る相談として職場でのいじめや嫌がらせに関する相談が増加の一途をたどっていますので、実際の職場の状況を良く知る管理監督者によるラインケアを導入して職場の実態に即して、より一層の対応が必要です。

過労死への対策~体を守る

さきほどの過労死等に係る統計資料(PDF)では、脳や心臓に関する症状が死亡につながったもので労災として認定されたものをご覧いただきました。

脳・心臓疾患に係る支給決定件数の推移
厚生労働省 平成28年版過労死等防止対策白書(PDF) より

しかし、労災として認定されていなくても労働者が脳や心臓に何らかのトラブルがあって死亡にいたったケースは数多くあります。

就業者の脳血管疾患、心疾患等による死亡数
厚生労働省 平成28年版過労死等防止対策白書(PDF)より

以前よりも減っているとはいえ脳や心臓に問題を抱えている労働者は、このグラフからも分かる通りまだ相当数いるのですから、やはり体に過度の負担がかかるような働き方は見直さなければならないと言えます。

ただ、これらの問題は高齢者に特に多くみられるようです。そのため、今回の白書では60歳未満の労働者に限定してこの問題を見るという試みも行われました。その結果分かったのは、産業別の死亡数は「産業不詳」を除いて考えると「建設業」、「卸売業,小売業」の順に多く、職種別の死亡数は「専門的・技術的職業従事者」、「サービス職業従事者」、「生産工程従事者」の順に多くなっているということです。

このような問題を改善するためにも、一刻も早い健康診断の適正な利用をし、労働者の健康管理に努めましょう。健康診断を適正に利用することで、病気の予防や早期発見につなげられます。また、労働者の体調不良による不測の事態やアブセンティズム、あるいはプレゼンティズムの予防のためにもぜひ事業所での健康管理を見直してみてください。

過労死への対策~労働者の死亡

自殺の状況を知る

日本での自殺の件数ですが、平成27年はおよそ24,000人でした。自殺者の総数も、その中に占める被用者の割合も減少傾向にあります。今回注目したいのは、自殺の原因に勤務が絡んでいるものですが、こちらも減少傾向にあります。ちなみに、勤務問題のうち上位のものは、上から順に仕事疲れが30パーセント、職場の人間関係が20パーセント、仕事上の失敗が20パーセント弱、職場環境の変化が10パーセント強でした。仕事での疲れが、勤務問題のトップになっていることからも労働者の心身に過度の負担を強いるような働き方を改善すべきと言えます。

また、勤務問題を自殺の原因の一つとしてあげた人の職業は被用者が80パーセントもいました。ここまでの労働時間の問題や、労働者のこころの健康の問題などと併せて考え、早急な対策が必要と言えます。

過酷な長時間労働は、労働者の心身を極度の過労状態に陥らせ、それによって労働者は正常な判断ができなくなってしまったり、うつ病を発症してしまったりします。そして、その結果、自ら死を選んでしまうということにつながります。先日の電通の女性社員の自殺でも大きく報道がされましたが、労働者の命を軽んじるような働き方は今すぐに改善されるべきです。

内閣府自殺対策推進室、警察庁生活安全局生活安全企画課が発表した平成27年中における自殺の状況(PDF)という資料からも、自殺の原因の中で健康問題や勤務問題がかなりの割合にのびっていることが分かります。健康問題には持病の悪化なども含まれていると推測できますが、過労はさまざまな体調の悪化を招くことは広く知られているところですし、勤務問題と併せて考えても被用者と自営業の人では数字に大きな違いがあることが見てとれますね。このことからも、労働者の心身の健康について事業者は細心の注意をすべきことが分かります。

職業別、原因・動機別自殺者数
内閣府自殺対策推進室警察庁生活安全局生活安全企画課 平成27年中における自殺の状況(PDF)より作図

過労死などに関する労災補償の状況

過重な労働によって脳や心臓にトラブルが生じたとする労災の請求件数は、近年は年間700件から900件ほどです。これを業種別にみると、特に運輸・郵便業で請求、支給決定件数が多くなっています。その中でも、より多いのが道路貨物運送業です。道路貨物運送業に含まれる代表的なものが、トラックなどを使用して宅配便の事業や貨物の運送の事業を行う運送業を指します。長距離トラックの運送の事業に従事する労働者が過労によって事故を起こしたニュースなどは、みなさんのご記憶にもあると思います。

下の表からも分かるように、この事業に従事する労働者は労災の請求件数、支給決定件数ともに他の業種とはかなりの違いがあります。該当する企業の方は特に労働者の労務管理にご注意ください。

脳・心臓疾患について
厚生労働省 平成28年版過労死等防止対策白書(PDF)より

精神障害に関する労災補償の状況

労働者の心と体は密接な関係にあります。ですから、過重な労働は体を疲弊させるだけではなく、労働者の心も健康な状態から遠ざけてしまいます。業務から強いストレスを受けたとして労災の請求をした件数は近年増加傾向にあります。厚生労働省でも労働者の長時間労働に対して本腰を入れていますが、行政から指導をされる前に、必要な措置をとり改善を心がけていただければと思います。義務化されたストレスチェック制度に関しても、率先して実行し、事業場内でストレス要因となり得るものに関しては早めの対策を立てるようにしましょう。そして、労働者全体のストレス耐性を上げられるような対策ができればより良い状況になります。

精神障害に係る支給決定件数の推移
厚生労働省 平成28年版過労死等防止対策白書(PDF)より

事業場でのストレスチェックの義務化がされ1年が経過しましたので、制度がきちんと運用されているか、労働者の心のトラブルに早急に気づけるように社内での体制の整備がされているかなど、制度の運用が始まって一巡したところでストレスチェックの結果をどのように活かしていくか見直してみてください。

今回の平成28年版過労死等防止対策白書(PDF)では、特に製造業からの労災の請求が多かったことが分かっています。その中でも、一般事務職に従事する労働者のメンタルヘルス不調が多いことが読み取れますので、ホワイトカラーの労働者に対してもきめ細かなメンタルヘルスが求められていると判断できます。

精神障害について
厚生労働省 平成28年版過労死等防止対策白書(PDF)より

統計からみると、30代と40代で労働者のメンタル不調が多発しています。会社にいるのに戦力としてあまりあてにできないようなプレゼンティズムなどの問題もあります。労働者個人のためでもありますが、会社の利益を守るためにも、労務管理に努め、早期にメンタル不調者に対応するようにしてください。早期のメンタルヘルス対策をするためには、労働者の普段の性格や個性などを把握し、普段とは違う状況が起きたらすぐに気づくことが重要です。ですから、普段からのコミュニケーションをとったり、部下の話を傾聴する姿勢を示すなどできることから始めてください。

興味深いのは、今回の統計では時間外労働20時間未満の労働者にメンタル不調による労災の請求が多くみられるということです。時間外労働の時間が「20時間未満」86件、「160時間以上」が65件、「20時間以上~40時間未満」が50件です。前年度と同じく「20時間未満」が最多ということですので、一概に労働時間だけが労働者のメンタルの不調に関係しているとは言い切れないということです。例えば、労働者本人のストレス耐性によって違うということも考えられますので、ストレスとの上手な付き合い方を労働者にレクチャーするなど多面的なケアをお勧めします。なお、精神障害に関係する労災の認定に関しての詳細は、平成23年12月から使用されている基準(PDF)をご確認ください。

過労死への対策~国家公務員の場合

国家公務員の一般職の公務災害の補償

民間の労働者の労災をイメージするとわかりやすいのですが、一般職の国家公務員も公務で災害に遭った場合には補償があります。

脳・心臓に関するいわゆる労災の請求件数は平成18年度が突出して多く、精神障害は生成18年度が突出しています。一般職の国家公務員と地方公務員では、公務災害の認定状況に違いはありますが、下記のようになっています。なお、公務員に関しても過労死を防止するための対策として、「過労死等の防止のための対策に関する大綱(平成27年7月24日閣議決定)(PDF)」に基づいて、脳・心臓疾患、精神疾患等に関して調査研究がされているところです。

一般職の国家公務員の認定件数の推移
地方公務員の公務上認定件数の推移
厚生労働省 平成28年版過労死等防止対策白書(PDF)より

さいごに

民間の労働者も、公務員も過労死させないためには抜本的な対策が必要です。働き方の改善や各種の健康施策など、どのような施策が有効なのか、まずは目の前の状況に応じた対策を各事業主が立てることが求められています。

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