「労働時間」の知識をもたない人事はいらない…

労働時間は、労働者に関係する諸々の計算の基礎になる大切なものですが、きちんと管理することが今のご時世には不可欠です。 労働時間にランチタイムや出張先への往復の時間は入れるのか?悩みを具体例な例でお教えします。

「労働時間」の知識をもたない人事はいらない…

労働時間は、労働者に関係する諸々の計算の基礎になる大切なものですが、きちんと管理することが今のご時世には不可欠です。

労働時間にランチタイムや出張先への往復の時間は入れるのか?悩みを具体例な例でお教えします。

労働基準法上の労働時間:割増賃金チェックしておく

労働基準法の一部が平成22年4月1日から施行されましたが、改正後の制度は社内で浸透していますか?長すぎる労働時間には、通常よりも多い割増賃金が必要になりました。

原則として労働時間は1週間に40時間、1日に8時間と決まっています。また、一定の条件を満たした場合は1ヶ月 を平均して1週40時間にする「1ヶ月単位の変形労働制」や1年の労働時間を平均して1週40時間にする「1年単位の変形労働制」があります。これを超え てしまった労働時間は法定時間外労働=残業になります。

労働基準法の一部改正まとめ図

出典:厚生労働省web

割増賃金をまとめますとこんな感じです。

時間外労働に関する割増賃金率図

労働時間の定義は判例から見るとわかりやすい

有名な判例を例に労働時間の定義を考えてみましょう。三菱重工業長崎造船所事件(最一小判平12.3.9)です。

◯ 被告:会社 → 就業規則で1日の所定労働時間を8時間と規程

1.更衣所での作業服及び保護具等の装着・準備体操場までの移動

2.資材等の受出し及び月数回の散水

3.作業場から更衣所までの移動・作業服及び保護具等の脱離

4.その他一連の行為を所定労働時間外(始業時刻前、休憩時間中、終業時刻後)に行うよう定めていた

◯ 原告:労働者 → 上記にかかる時間は労働時間に当たり、時間外労働として割り増し賃金を請求。

(労働者は、会社から事業場内の更衣所で作業服、保護具等の装着を義務付けられていた。)

★ 結果:原告:労働者の勝訴。1、2、3の行為は会社の指揮命令下と認定され、労働時間に当たるとされました。

 

労働時間に該当するか!?注意する6つ

労働時間というのは、労働者が実際に業務をしている時間だけではなく、「労働者が使用者の指揮命令下にある」と判断される時間をさします。

労働基準法でいう労働時間は、就業規則の所定労働時間とは一致するとは限りません。労働時間は就業規則でどんな ルールになっているのかということではなく客観的に決定します(客観説)。労働者のその行為が客観的に見て使用者の指揮命令下にあるかどうか(指揮命令下 説)が重要です。

①    手待ち時間

実際には座っているだけで作業はしていないのですが、指示があればすぐに作業に取り掛かる状態です。この時間はいつでも作業を始められるように「待機」している時間なので、労働時間にあたるので賃金は必要です。いつでも作業できる状態というのは、言い方を変えれば会社の指揮命令下にいる状態です。

②    電話番

昼休みに自分の机でお昼を食べたり、業務とはまったく関係のない雑誌を読んでいたとしても、電話が鳴ったらその対応をしなければいけない状態だったら、それは休憩とはいえません。昼休み等に電話番を指示されている場合、会社の指揮命令下にいるので労働時間になります。実際に電話があったかどうかは関係ありません。

ただし、会社の指示ではなく、昼休み中の人が目の前の電話をたまたまとって短時間の対応をしたと言う場合には、労 働時間にはなりません。重要なのは、会社の指示があったかどうかということです。ですから、電話を取らなかったことを注意する=電話対応の指示となるの で、休憩時間の人がたとえ電話をとらなくても注意はできません。

③    着替え時間

業務に必要があって、着用を義務付けられた服に着替える場合、事業場内での着替えを会社から義務付けられている場合は、労働時間になります。業務上の必要度が高く、義務づけられていて、拘束性があるかどうか客観的な基準で判断されます。

裁判でも着替え時間は労働時間として取り扱うか否かの判断が分かれているのですが、これまでの判例から以下がポイントになっています。

1. 会社の命令で決まった時間に決まった場所(事業場内の更衣室等)での着替えが義務付けられていて、服装点検もその場で行われている場合 → 労働時間

2. 業務の性質上、どうしても着替えが必要な場合

警備員の制服、デパートのエレベーターガール等職務の識別上の必要性がある場合 → 労働時間

3. 法令で服装の規定がある場合等(防護服が必要な職業等が含まれる)→ 労働時間

④    通勤時間

会社への往復の時間は、当たり前ですが労働時間ではありません。

⑤    出張先への往復の移動時間

荷物の運搬が目的であれば労働時間です。

⑥    ビル管理人やホテルフロントマン等の仮眠時間

具体的に業務にあたっていなくても、必要に応じて待機している状態なので、労働基準法上の労働時間に該当します。

最後に

労働時間は就業規則等での規定に関わらず、客観的に決定します。使用者の指揮命令下の有無は重要です。規則に捉われずに、実態がどうなっているのかを考えると自ずと労働時間かどうか判断できます。

 

<参考WEBオススメ>

厚生労働省:労働基準法の改正

→ 長時間労働の抑制を目的に、労働基準法が改正されました。

平成22年4月1日から、1ヶ月に60時間を超える時間外労働を行う場合、割増賃金率の引上げ。

労働基準法

→ 労働基準法全文。32条に労働時間に関する規定があります。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構

→ 労働時間の定義。三菱重工業長崎造船所事件(最一小判平12.3.9)

独立行政法人 労働政策研究・研修機構

→ 時間外労働について

独立行政法人 労働政策研究・研修機構

→ 休憩について

独立行政法人 労働政策研究・研修機構

→ 労働時間の適用除外について

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